兵庫県たつの市の西南部に、「室津」という牡蠣で有名な小さな港町がある。
かつては御津町だったが、平成の大合併でたつの市に編入された小さな町だ。
今では田舎の一漁村に過ぎない室津には、1300年という驚くほど長い歴史がある。その歴史の一端を垣間見ようと、牡蠣のシーズンを狙ってふらっと訪れた。
室津の歴史
リアス式海岸の入り江にある室津は、古くから風待ち、潮待ちの港として栄えた港町だった。
最盛期は江戸時代。西国の大名たちが江戸に参勤交代する際、難所だった播磨灘を避けるためにここ室津に上陸し、ここから陸路で江戸を目指すようになった。
今風に言えば、大型客船がバンバン入港するような港、と言う感じだろう。
ゆえに室津には大名の宿泊所だった本陣が6軒もあり、海の宿場町として「室津千軒」と呼ばれるほどの活況を呈した。
しかし栄華はそう長くは続かなかった。河川がない室津は物資の集散地となることがなく、江戸末期には寂れた寒村のようになってしまったという。
すでに6ヶ所の本陣は跡形もなく、往時を偲ぶものは廻船問屋「嶋屋」を改装した『室津海駅館』と豪商「魚屋」を改装した『室津民俗館』、二軒の商家のみとなっている。
ちなみに、室津海駅館、室津民俗館いずれも見学可能。(大人200円)
江戸期の建物は二軒だけだが、海と山に囲まれた狭い土地にひしめく古い家並みと、入り組んだ細い路地はなかなか見ごたえがある。
明神道と書かれた石碑を左手に折れると急激に道が細くなる。
その先に、浄運寺なる浄土宗の古刹がある。
遊女伝説
平安時代に法然の弟子が開基したというこの寺に、室津の遊女にまつわる伝承が残されている。
遊女の始祖と言われる「友君」。
1207年、潮待ちで立ち寄った法然に自らの業の深さを吐露した友君は、「ナリワイは変えられないんだぜ。だから開き直ってひたすら念仏を唱えるしかないんだぜ」と諭される。
感銘を受けた友君は出家し、阿弥陀仏一筋に往生を遂げたという。
・・えぇ話や(T_T)
その友君の塚が境内にひっそりと立っている。
遊女発祥の地と言われる室津。なにぶんいにしえすぎる話なので遊郭の名残などは何もないが、ここで歴史に想いを馳せてみるのも存外悪くない。
町並みを見る
風情のある町並みを眺めながらぶらぶらと歩いてみた。
「室津千軒」と呼ばれた頃の面影はないが、石畳の路地が歴史を感じさせるいい町だった。
個人的には、観光地化されて人でごった返す古い町並みより、こういう忘れ去られた静かな場所のほうが肌に合っている気がする。
本格的にまち歩きをはじめ、こうして文章を書くようになってからはまちの歴史を調べる習慣が身についた。色々知識もついたし、何より昔より歩くのが楽しくなった。
まだまだ日本には知らない場所がたくさんあるし、知らない歴史がたくさんある。先のことはわからないけど、続く限りは色々な場所に足を運びたいと思う。
飽きるのが先か、体力が保たなくなるのが先か・・w
高台から室津港と町並みを眺める。
これを見れば海と山に囲まれた港町、の意味がおわかりいただけるだろう。
まち歩き目的でやって来たものの、むしろ楽しみだったのはこっちのほう。
道の駅で牡蠣鍋を食べてから帰路についた。
牡蠣うまー
[訪問日:2017年11月25日]
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