「くらしっくロード」の愛称で呼ばれる増田の町並み。
通りから見えるのは商家の主屋ばかりで、蔵と言えば日の丸醸造さんと観光案内所ぐらいしかなかった。
これは一体どういうことなのか。
その答えを確かめるために、「蔵の駅」と書かれた観光物産センター(旧石平金物店)の中に入ってみることにした。
長大な空間を確保して豪雪に立ち向かった
かつて金物の卸売業をしていた旧石平金物店。
建物は市に寄贈され、見学施設へと生まれ変わった。
ここは無料で見学できる施設なので、是非とも立ち寄ろう。(名前の通りみやげも売ってる)
通りに面した店舗の奥に神棚のある「次の間」、「座敷」、「居間」、「水屋」と続く配置は増田の典型的な商家建築の特徴。
そして、水屋に続くのが「土蔵(内蔵)」である。
増田の町並みのアイデンティティとも言えるのが、この「内蔵」。
実は、蔵は建物の中にあったのである。
通りから見えなかったわけだよ…。
この蔵は、「鞘」という上屋で覆われ主屋と接続している。そのため鞘付土蔵と呼ばれたりもする。
建物の中にあるのは、もちろん雪害対策である。
で、この蔵の駅の内蔵。
かの有名な、吉永小百合スポットなのである。
※吉永小百合さんがJR東日本「大人の休日倶楽部」のポスターやCMの撮影で訪れた撮影地が観光スポット化する現象
町並み界では、同じく重伝建の『宿根木』が有名だ。
そして、これも各地で見られるがご丁寧に立った場所を示すテープまで貼ってあった。
手書きなのがすごくいい。
増田の内蔵には収納を目的とした「文庫蔵」と、その発展型である生活空間を目的とした「座敷蔵」があり、後者が65%を占めている。
明治期頃まで、各商家では従業員含め20人近い人がひとつ屋根の下で暮らしており、家族のプライベート空間が必要とされたことでそれまで主流だった文庫蔵から座敷蔵へと置き換わっていったのだそうだ。
二階へ上がってみると、確かにそこは完全に物置だった。
蔵もろとも全体を覆ってしまった、いわゆる「建屋」のようなイメージだろうか。
二階建ての蔵があるおかげで天井がかなり高い。
裏玄関から表玄関方面を見る。
この、建物の前後を貫く通路を「トオリ」と呼ぶ。
増田では、内蔵の奥に裏庭があって、さらに外蔵まで付くタイプの商家が多い。
奥にある内蔵や庭に比べ、通りから見える表構えが質素に見えることから明治中期まで「ホタル町」と呼ばれていたそうだ。
※蛍はお尻の先がキレイに光る
これが町並み案内所の名にあった「ほたる」の由縁である。
秋田と言えば、花火師がガチンコで競い合う大曲の花火がとにかく有名だが、ここ増田はそんな秋田でも県内随一の歴史を誇る花火大会があるそうだ。
豪雪地帯ならではの、家の中に蔵がある町並み。横手市増田。
もうちょっと時間があれば、あと2~3の建物を見学できたが十分満足した。
で、この増田は県内有数のりんごの産地。
ここへ来る途中に林檎畑の前を通ってきたこともあって、サブリミナル効果でうっかりりんごジュースを買ってしまった。
って、なんか買わされた風なこと言ってるけど、りんごジュースは大好きです。
おしまい。
[訪問日:2020年11月15日]
コメント