知多半島の真ん中あたりに位置する愛知県常滑市(とこなめし)は、六古窯のひとつに数えられる「常滑焼」で知られる焼き物のまちである。
常滑駅からもほど近い小高い丘の上に、昭和初期頃に隆盛を極めた窯業集落が『やきもの散歩道』として整備され、観光スポット化しているのでカメラ片手にぶらぶらと歩いてきた。
やきもの散歩道はAコース:1.5km、Bコース:4kmとふたつある。
赤煉瓦の煙突や窯元があるのがAコースのほう。Bコースは常滑が発祥の日本を代表する陶器メーカー、INAX(現LIXIL)のミュージアムをめぐるためのコースだ。
クルマだったので、やきもの散歩道駐車場からスタート。
地面や壁に埋め込まれた何か(調べても分からんかった…w)が、いかにも焼き物のまち然とした風情を醸し出している。
常滑焼は、江戸後期頃から土管を主力製品に据えて発展してきた歴史がある。
歩いてると土管がよく目につくのはそんな由縁だったりする。
最初の角を曲がると、常滑の代名詞と言ってもいい赤煉瓦の煙突が見えてきた。
めちゃくちゃ風情ありますなぁ。
ありあまる重厚感…。
常滑焼について
常滑焼は六古窯の中でも最も古いと言われており、その歴史は平安時代にまで遡る。
作品の傾向も時代ごとに異なり、例えば鎌倉時代では壺や甕、鉢などが多く焼かれ、明治前後では先述のとおり土管が主力となった。
近代ではINAXに代表される衛生陶器(便器や洗面台など)やタイル、そして、市井の人にとってはおそらく最もイメージが強い急須などの茶器が主産品となっている。
常滑焼の急須は赤茶色をした「朱泥急須」と呼ばれる。
原料となる朱泥土には酸化鉄、すなわち鉄分が多く含まれていて、これによってお茶の渋みが取れ、まろやかな味わいに変化するそうだ。
以前、梅田の阪神百貨店に急須を買いに行ったとき、売り場のおばちゃんからその話を聞いて常滑焼すげ~な、と感心したものである。
まぁ、お高かったので結局波佐見焼のにしたんだけど(笑)
登窯
明治20年頃に築かれ、1974(昭和49)年まで実際に使用されていた、現存するものとしては国内最大級の登窯が残っている。
斜度が約17度、なんと8つも窯がある。
窯の内部。
煙突も高さの異なるものが10本もあり、いかに巨大な登窯かがよくわかる。
昭和57年には国の重要有形民俗文化財に、さらに平成19(2007)年には近代化産業遺産にも指定されている。
やきもの散歩道の鉄板スポットなのでここは確実に足を運ぼう。
登窯の横にあるのが「登窯広場」。
何やら奇っ怪なオブジェが登場。
どんどん行きましょう。
散歩道のメインは煙突、窯、工場などの窯業関連遺産だが、古くて趣きのある建物や入り組んだ路地も何気に見逃せない。
おや?板塀に何やら案内板がある。
おぉ!この場所が20世紀少年のロケ地として使われたそうだ。
ケンヂの実家の遠藤酒店は江南市の新町通商店街だけど、その実、映画のほとんどが常滑で撮られたそうだ。存じ上げませんでした…。
続いては「でんでん坂」へ。
何だろう、この由来が気になる名前は…と思ったら、この坂道のある丘が『でんでん山』と呼ばれているからだそうな。
このでんでん坂の途中に、江戸末期に建てられた廻船問屋の瀧田家がある。
運悪く、この日から年末年始の休業日で見学は叶わず。
仕方ないので坂の上からなかば盗撮のような格好で撮影…。
ところでなぜこんなところに廻船問屋があるかと言うと、江戸~明治初期にかけて常滑はこのエリアを代表する港町だったからで、窯業が発展した理由のひとつがこの海運という強力な輸送手段があったからである。
(2ページ目へ続く)
コメント