猿島の名は、何も長野の地獄谷温泉よろしく野生のサルが大量に棲息しているから、という理由ではない。
鎌倉時代、日蓮上人が鎌倉に向け海を渡っていると大荒れになり、お経を唱えたら白猿がこの島に導いてくれて命が助かったという伝説にちなんでいる。
日蓮洞窟
その伝説にちなむ場所が、猿島の最北端にある。崖下へ続く階段を、慎重に一歩ずつ降りてゆく。
ここが「日蓮洞窟」と呼ばれる場所で、ここで日蓮が避泊したと言われている。
そして、この洞窟は江の島のあの「岩屋」へ続いているとかいう都市伝説があるらしい。
立入禁止の日蓮洞窟を横目に周囲を見渡せば、そこはもう海抜0mの世界。
海は凪いでいる。そろそろ日が傾いてきた。日没も近そうだ。
帰りはもう一本の散策路から戻ることにする。島の北東部には広場があり、階段を下りると「オイモノ鼻」という岩場がある。筆者は嗜まないのでよくわからないが、何やら絶好の釣りスポットらしい。
江戸時代、この広場には異国船の江戸への侵入を防ぐための台場が弘化4年(1847年)に設置された。
展望台広場へ向かう途中、こっちは戦時中のものと思われる砲台跡。
砲座の跡がはっきりくっきりと遺っている。
展望台
その先に見えてくるのが、仮面ライダーの初代ショッカーの基地となった展望台。
1972年というから実に40年以上前の話である。
昔は上に登れたようであるが、今ではイタズラ防止のためか防護柵がめぐらされ立入禁止となっている。
老朽化が激しい外観とは打って変わって中は比較的キレイなようであったが、壁には不快な落書きが散見され少々げんなりする。
実際、猿島では落書きをはじめ迷惑行為が後を絶たず、横須賀市も随分と苦慮しているという。
うわ!これじゃ立入禁止になるのも無理はない。
このまま放置しとくのもアレだし、願わくば維持管理費を使って改修してほしい。上からは、東京湾ごしに横須賀の街が見えてかなり眺めもいいみたいだし。
そろそろ遊歩道も薄暗くなってきた。急ごう。
島の南東部にある広場まで戻ってきた。ここからは観音崎がよく見える。
暮れなずむ空の下、砂浜の隣にあるボードデッキに到着。無事に戻ってこれたら、あまり意味は考えずに迷わずこう言い放ちましょう。
終点が玉座の間とは上出来じゃないか!
地球はまわる 君をのせて
いつかきっと出会う 僕らをのせて♪
東京から約2時間。
東京湾に浮かぶ無人島、「猿島」。
そこでは、旧日本軍の要塞跡が創りだすラピュタさながらの景観を見ることができる。
BBQや海水浴のせいでもはや「レジャーの島」となっているが、島に遺る軍事遺産は戦争を知らない我々世代には貴重なものであるし、せっかく行くなら是非とも見てほしいと思う。
ラピュタ効果で観光客が増えた島が今後どうなっていくか。
静かにその動向を見守っていきたいと思う。
[訪問日:2014年12月7日]
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