大和郡山市にある旧遊郭建築、町家物語館(旧川本邸)。
ここから後編。
非公開となっている3階へ続く大階段。
ひな祭りのイベント時はここに豪奢な雛飾りが展示され、イベントの目玉となる。
一般公開後、初のひな祭りと来れば大混雑するのは目に見えていたので、あえて始まる前の空いてる時期に来たというわけ。
二階の吹き抜けから中庭を見下ろす。
この構造もまた遊郭建築の特徴のひとつ。
ふたたび一階へ
吹き抜けの向こう側は川本さんの居宅だったところで、もちろん非公開。
順路は再び一階へと戻る。
おそらくこれ、遊客が帰るときに使ったいわゆる“裏階段”だと思う。
洗面所。
こちらは従業員用の風呂があった場所。
『全国遊廓案内』には、娼妓は居稼ぎ制ではなく送り込み制だったとの記述があるので、使ったのは川本楼のスタッフ達でしょうね。
天井には川本家の家紋。
浴室の奥には便所。扉の窓は松竹梅。
やっぱり松は上客優先とかそういうのがあったんだろうか。
欄間の意匠を見て
「これ、松葉ですよね?」と尋ねたら「そうです」と。
縁起物の松は、遊郭みたいなところでは好んで使われたんですよね。
大広間
12畳の大広間。ここで使われている木材はかなり高価なものだとガイドさんが仰っていた。
障子には雪見窓。
黒い床柱はエンジュ。
漢字で書けば「槐」。悪いものを寄せ付けないため、という意味と、もうひとつ「延寿」をかけていたんだそう。
なるほど、奥が深い。
ここにも川本家の家紋。
中庭。説明はなかったけど、きっと石の配置ひとつにしても意味があるんだろうな。
仏間の奥にふたつある小部屋は、病気になった娼妓を療養するために使っていたという説明だった。
悪く言えば隔離だけど、全国的には座敷牢に放り込んでた遊郭の話なんかもたまに聞くし、その点では川本楼は良心的だったのかなと思う。
娼妓の名前?
娼妓が使っていた小物入れが当時のまま残っていた。
これは凄い…。
一番下の引き出しには調理器具のようなものが。
今でもいる普っ通の名前ですね
って言って笑うお客さんが多いらしい。
わかります。100%同感です(笑)
反対から。一番奥が仏間で、その先が中庭。
最後が帳場。ここにも「猪目」がある。
奥にある小窓で現金の受け渡しをしたんだろうか。
全国的に“負の歴史”の象徴である遊郭建築は、家主がいなくなったりするとあっけなく取り壊されてしまうケースが本当に多い。
そんな中、買い取った上に耐震工事まで行い、一般公開にこぎ着けた大和郡山市の取り組みは本当に素晴らしいと思う。
価値ある建物を残すために。その地に刻まれた歴史を後世に語り継ぐために。
今後、同じように保存されていく遊郭建築がひとつでも増えることをささやかながら願ってやみません。
[訪問日:2018年2月11日]
町家物語館(旧川本邸)
奈良県大和郡山市洞泉寺町10番地
0743-52-8008
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、祝日の翌日、年末年始
入館料:無料
近鉄郡山駅、JR郡山駅から徒歩約10分
※駐車場はありません
コメント
内部を公開していたとは、、、
またレポありがとうございます。
なかなか、自由な時間がとれないもので
遠距離は探索もできませんので。
洗面所は魅力ありますね。
私もたまたま何かで知って、これは何が何でも行かなければ・・と。
ここは本当に一見の価値あり、なのでまとまった時間ができたら是非奈良へ足を運んでみてください。
私も今日行ってきました。
今日から3階も一般公開が始まったとかで、3階も満喫してきました。
もちろん素晴らしかったですよ。
残念ながら大階段は、転んでケガされた方がいらしゃったとかで、使用禁止になったそうです。上ってみたかった。
3階も一般公開ですか!情報ありがとうございます。
6月頃に再訪する予定があるので、今から楽しみです。
大階段は残念ですね。