城下町風情が漂う兵庫県たつの市。
『播磨の小京都』と呼ばれる城下町の古い町並みは2019年10月に重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)への仲間入りを果たした。
そんなたつのに面白そうなスポットが爆誕したと聞いて、意気揚々と赴いたのがこの日の話。
2018年3月にオープンした、その名も『昭和レトロ情景館』
まさに、このブログで紹介するために誕生したと言っても過言ではないようなネーミングではないか…。
現地に到着すると、そこには築200年の古民家。
おぉ、こ、これか・・!?
行く前から臨界点に達していた期待値が、この瞬間完全に振り切れた。
昭和レトロ情景館のアクセス
先に行き方を説明しておこうと思う。
重伝建エリアから少し外れた、白鷺山公園のやや南に位置する。
ご覧のとおり、龍野の城下町は駅から遠く日・祝はコミュニティバスも運休なので電車の方はご注意を。
車の方は、県道沿いに有料の観光駐車場があるのでそちらから。
そこからであれば徒歩5分ぐらい。
さて、それでは早速中へ入ってみましょう。
たつのの城下町には元来江戸期や明治期の町家が結構残っているが、まさか「昭和レトロ情景館」がその時代のものだったとは。
筆者は将来的に古民家をリノベして住居にするという野望があるので、古民家の内部が見れるのは願ってもないことだった。
素晴らしい…。
ちなみにここ、先にネタバレすると館長さんのご実家。博物館、というか展示は2階で、1階は特に何かに使われていると言った感じではなさそう。
おそらくご自宅は別の場所にお持ちなのかな、っと。
格子戸って夏は涼しそうでいいよね。
ただね、これは実際に古民家に住んでる方から聞いた話だけど、土壁って冬はめっちゃ寒いんだってね。
さてさて、それでは二階へ上がってみましょう。
階段も趣きがあって良き。
窓側には喫茶コーナーが併設。
旧城下町の通りを眺めながら珈琲タイム。なんて優雅なひととき。
さらに、たつのの特産品やオリジナル商品の販売コーナー。
昭和30年代の写真まで!
特に昭和38年の渋谷の風景(左下)がたまらん!!
一度でいいからこの時代に行ってみたい・・
さて。
長くなったけど、ここまでは実は前置き。
そろそろ主役に登場してもらいましょうか。
どん!!!
す、すげぇ・・
なんだこれ・・
クオリティ高すぎでしょ。。。
ちょっとアングルを変えると、梁の太いこと!
200年もの間、家を風雪から支え続けて来たまさに大黒柱。
頭が下がります。
館長さん渾身のジオラマに迫る
まずこのジオラマ。「東龍野町」なる架空の街を80分の1のスケールで作製したもの。
館長さんが幼少時代を過ごされた昭和30~40年代の街並みをイメージして作られている。
細部に目を走らせると、いかに精巧にできているかがより理解できる。
建物、乗り物、人間、草木にいたるまで、恐ろしいほどの再現性。素人目にもこれがどれほどすごいかぐらいはわかる。
「これ、どれぐらいかかったんですか?」
「13年かかりました」
じゅっ、じゅうさんねん…( ゚д゚)
そうなのである。
このジオラマ、すべて館長さんのハンドメイド。それも一人でコツコツと13年かけて完成させたという代物で、言わばたゆみなき努力の結晶なのだ。
何か大きなことを成し遂げたとき、その結果よりも、そこへいたるプロセス、特に日々の小さな積み重ねこそが最も価値があると筆者は常々思っている。
とかく、人は易きに流れる生き物。“継続”ほど難しいことはないからである。
すごいものを見せてもらった…。
正直、ジオラマの完成度よりも13年の歳月。そっちに感銘を受けまくった。
で、次に気になったのは費用の話。
「全部でいくらぐらいかかったんですか?」
こんな質問を投げかけたら、館長さんから絶妙な答えが返ってきた。
「酒飲みは酒にいくら使ったか憶えてないでしょ?それと同じことですよ」
Σ( ̄ロ ̄lll)
ふ、深い・・
そして自分も酒を飲む人間なのでよくわかる…。
ちなみに、紙なんかは一枚一枚ピンセットで貼ってるそう。気の遠くなるような作業で想像しただけで吐きそうになる。。
見るだけではなかった
このジオラマ。
眺めて愛でるだけかと思ったら実は大間違い。
なんと!
ちゃんと走るようにできており、毎時0分から10分間、館長さんが自ら操縦して実演してくれるのである。これは嬉しい。
というわけで、まずは動画でご覧あれ。
ディーゼル機関車が野を越え山越え、再び街へ戻ってくる様子を汽笛とBGM付きで楽しめる。
BGMは童謡の「汽車」。
いやぁ、これはすごいわ・・プラレールの100倍楽しいw
このあと、SLの走行も見れたりして大満足な実演だったんだけど、最後に驚くべきことが・・
なんと!
転車台も動くんDEATH!!
これもう、往年の鉄道ファンとか泣いて喜ぶ場面じゃないですか・・
感涙でもう前が見えません(涙)
夕景演出
毎時30分から40分の間は「夕景演出」と称したイベントが行われ、夕方をイメージした光源でジオラマがライティングされる。
キレイ・・
何という心憎い演出・・
これね、よく見ると街灯のみならず建物内にも光源を仕込んでるんですよ。
ここまでやるとは・・圧巻の一言に尽きます。
館長さんからいくつか伺った話は文中にも織り交ぜてきたけれど、この建物のことも聞いてみた。
文政年間、築202年と仰っていたので1818年築だろうか。
さすがに修繕ぐらいはしてるだろうけど、移築も改築もしてないすべて当時のままなんだそう。
つまり梁や壁や柱は江戸期のオリジナルってことになる。
館長さんのご先祖様がさぞかし丁寧に住まれて来たのだろうし、新たな役割を与えられた建物が、今後も多くの人を楽しませる場であり続けてほしいと切に願う。
いや~、本当に楽しかったな。
付近を散策
以前たつのを歩いたときは歩き疲れてこのあたりまで足を伸ばさなかったんだけど、付近には古い町家や町並みが残ってたので少しだけ歩いてみた。
こんな白壁土蔵があったり。
元造り酒屋っぽい建物があったり
こんな擬洋風建築まであったり・・
たつのは古い建物の宝庫なので、また今度しっかり歩いてみたい・・いや、歩かなければならない、と強く思った久しぶりの訪問でした。
昭和レトロ情景館
兵庫県たつの市龍野町日山290番地
090-9283-1925
開館時間:10:00~16:30(最終入館時刻は16時)
入館料:高校生以上450円、小・中学生250円、小学生未満無料
休館日:月・火(ただし祭日は開館)
コメント
東京MXテレビの093チャンネルの「ヒーリングタイム」という番組で、ジオラマシリーズというのがあります。ジオラマ作家の作品が紹介されているのですが、その中にも昔の鉄道ジオラマがあったりしますよ。もちろん、永井荷風さんが隠れている昔シリーズもあります。浅草の秘密基地でも展示されていたものです。私は、永井荷風さんではなく、町田忍さんを見つけた時は思わずニヤリとしてしまいました。
そう言えばジオラマありましたね~。永井荷風が登場するやつ。
残念ながら、三十坪の秘密基地もいつの間にか閉館してしまいました。