日本の首都東京にはいろいろな聖地が存在する。秋葉原(オタク)、中野(サブカル)、六本木(恋人)など枚挙に暇がないが、その中でもひときわアングラ的な意味で輝きを放つ聖地がサラリーマンの聖地新橋である。
サラリーマンの街と言われる所以は、そこで働く人が多いというわけではなく、庶民的なレストランや飲み屋が多く自然とサラリーマンが集まる街だったからという理由によるらしい。
現在ではもはや払拭不可能なほどに飲み屋街のイメージが定着しているが、その原点とも言える場所が現在でも駅の中にある。
はじまりは闇市
それがこの新橋駅前ビル。電通本社がある汐留シオサイト方面に向かうときに使う汐留口から出てすぐのところにある。シオサイト地区とは似ても似つかないカオスな雰囲気が漂う。
一歩足を踏み入れると、そこには飲み屋が軒を連ねる光景が広がっている。
実はこの新橋駅前ビル、戦後闇市にその起源がある。闇市とは、敗戦後国家として体をなしていなかった日本の各地で自然発生的に出現した平たく言えばフリーマーケットである。
人々が勝手に物の売買を始めて利益を得る場で、おもに駅前に多かった。
新橋もそのひとつで、多くの闇市は行政による強制移転か解体という末路をたどることになるが、新橋の場合、規模がでかかったこともあり解体後、そこにできたビルの地下に移転。
そのビルこそが新橋駅前ビルなのだ。
中には大きめの店もあるが、ほとんどはカウンターしかないような小さな店が並ぶ。
今にも発火して焼けきれそうな電源プラグが重ねた年月を物語っている。
中にはこんなモダンな喫茶店もあったりする。いや、当時はモダンだったかもしれないが現代ではレトロの部類に入る。
サラリーマンの街なのにトイレがチップ制とは一体どういう了見なのだ。と思わずツッコみたくなった。
さて、実は今まわってきたのは北側にある1号館である。
反対側には2号館がある。
そしてこの2号館こそがまさに新橋の本気を垣間見れる。
すでにただならぬ雰囲気がビシバシと伝わってくる。しかしせっかく来たからには入らねばならない。
土曜日のまだ18時前だったこともあり、人はいない。狭い路地に飲食店が密集している。
1号館に行ったあとに来ると、いかに向こうの店が広かったかがわかる。基本的には5~10人でオーバーフローするようなキャパの店しかない。
というか、もしかしたら土曜日は休みだったのか?と思えるほどの静寂っぷり。いや、準備中の店もちゃんとあったのでそんなことはないと思うが。
しかし一人でカメラ持ってウロウロしてたらどやされかねない空気感。早いとこずらかろう。
サラリーマンの街と言えども、新陳代謝の早い東京のど真ん中にまだこんなところが残っているのかと言いたくなる新橋の駅地下、新橋駅前ビル。
実は反対側の、SL広場で有名な日比谷口にも「ニュー新橋ビル」というやはりここと同じ起源を持つオンボロビルが存在する。
機会があればこちらもいつかレポートしたい。
[訪問日:2013年12月21日]
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