END OF SORROW・・さらば郡山新地 -哀しみのエピローグ-

奈良県
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大和郡山市にある奈良三大遊郭の一角を担う郡山新地(東岡遊郭)。

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2014年7月に初めて足を踏み入れてから、早いもので4年以上の歳月が流れた。


2018年ももうすぐ終わるという頃、この郡山新地がいよいよ消滅しそうという不穏な噂をちょくちょく聞くようになった。
それならばと、訳のわからない義務感に駆られ最期を看取るために現地へと足を運んできた。

まだ色街歩きのビギナーだった頃、憧れだけを引っ提げて500km離れた関西へ向かった。そのとき歩いた郡山新地は、言わば自分の原点とも言える場所のひとつ。

久しぶりにやって来たら懐かしさが胸の奥からせり上がってきた。

懐かしのたばこ屋、怖い人の事務所、そして横にある売物件の元妓楼。
ぱっと見、ほとんど変化がないように見える。

しかし、それはこの一角だけだったことにすぐに気がついた。

あまりの現実に打ちひしがれた

何かの悪い冗談としか思えなかった。
三階建ての妓楼があったほうへ行くと、正面の空き地に目が釘付けになった。

・・うず高く積まれた瓦礫の山。

見せしめとしか思えないそのむごい光景に激しい戦慄が走った。

“歴史の生き証人” と喩えたコイツに悪い夢でも見せられているのではないか。

一体ここで何が起きたんだ・・たぬきよ、知ってるなら教えてくれ。

冷静に周囲を見渡してみる。
三階建ての遺構はまだあった。どうやら屠られたのは奴ではないようだ。

しかしながら、より一層傷みがひどくなっている。4年前の時点ですでに臨終の淵に立っていたが、ヤバさに磨きがかかっている。

入口にいたっては板が打ち付けられて完全に封鎖されていた。

きっと次はコイツの番なのだろう。Xデーはそう遠くない未来に確実に訪れる。

よく見たら、電柱にここの通称である「岡町」の文字があった。前回はまだ「電柱を見る」のスキルを習得してなかったから気がつく由もなかった。

違和感の正体にようやく気がついた

よくよく街並みを観察してみると、4年前にはなかったと思われる真新しいアパートや戸建てが雨後の筍のように立っていた。

当時の景色はもう忘れてしまったが、廃墟のような妓楼ばかりが何軒もあって、よく晴れた朝だったにも関わらず薄気味悪い印象だけが残ったことはよく覚えている。

この空き地にも確か遺構が立っていたように思う。おそらく右手のアパートもなかった。
4年の間にかなり“浄化”が進んでいたようだ。

真冬の昼の悪夢

たばこ屋から西へ。悲劇はその先で起きていた。

確か、『吉乃』の屋号がある元妓楼がそこにはある・・はずだった。
明らかに様子がおかしい。

養生幕かと思ったそれは、目隠しだった・・
そして、隙間から中を覗くと信じたくない光景が目に飛び込んできた。

瓦礫の正体が何なのか、よくわかった。

東岡は、文字通り最期を迎えようとしていた。もう悪あがきする力も残されていないように見えた。

箕山新地

郡山新地の目と鼻の先に、「箕山新地」なる謎の一角があると言うのでそちらへ行ってみた。

名前から察するに、歓楽街めいた場所だったのだろうと思う。
どういう場所だったのか、いつ頃存在したのか、あらゆることが謎である。

何やら想像力を掻き立てられる建物も残っていたりして、ずいぶんと興味深いところだった。

消化器に残る「箕山新地」の文字

約4年半ぶりにやって来た、奈良・郡山新地(東岡遊郭)跡。

あと数年もしたら元妓楼の建物は一掃され、新しい住宅やアパートしか見られない場所になってしまうだろう。

哀しい歴史に彩られた地。光と影の間を彷徨った色街は、今、静かに終焉を迎えようとしていた。

[訪問日:2018年12月15日]


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