下関市新地西町。
かつての遊郭の目抜き通りを進むと、小高い丘へと至る。
気がつくと、ふらふらと吸い寄せられるようにそちらの方向へと歩いていた。
路地に高低差がつき始め、もはや人しか通行することのできないそこはすでに迷路でしかなかった。
まるで断崖にしがみつくように立ち並ぶ家々。
この風情。この風格。路地歩きが最も楽しいと思える瞬間である。
崖下のラビラント
ぬけられ・・ます?
ぬけられ・・ました!
出てきたのは、崖下に張り付くように伸びる一本の路地だった。
振り返る。なんて楽しそうな路地裏なんだ。
さっき降りてきた階段は、左手奥から続いている。
いや、どう見ても私有地だろ。
濃密な空間。積み上げてきた歴史の重さを思う。
絶妙なカーブのせいだろう。
完成度の高い、洗練された路地。涙が出るような風情がそこにはあった。
千歳湯は創業100年以上、現役の銭湯。
赤線時代、嫖客や女給さんたちも通ったことであろう。
路地を抜けてくると、猫が礼儀正しい座り方で迎えてくれた。
遠くから来た旅人を見送ってくれているのだろうか。
楽しかった。そろそろ駅へ戻ろう。
と思ったところで、たまたま入り込んだ路地でもう一軒見つけた。
あと、これも見ておきたかった。
「しんち」の看板。
これもよく知られている物件であろう。
おなじみ、バーの鑑札。
壮絶なバラック・・これはすごい。
火災には気をつけてほしい。切にそう願う。
再開発で消えることはなさそうとは言え、老朽化や災害で危険な状態になって取り壊される可能性は大いにある。
特に、一番有名な遺構はまさしくそんな状況だった。
訪問される方はお早めに。
[訪問日:2018年8月16日]
コメント
むぎ焼酎 二階堂のCM「刻の迷路」に出てきた場所ですね。お酒は全く飲めませんが、CMは二階堂、ポスターは「いいちこ」が好きです。二階堂はともかく、いいちこの撮影場所って、どうやって探しているのでしょうね?
二階堂のCMで新地町が出ていたとは・・驚きでした!調べたら1998年のようですね。
まさに「刻の迷路」と呼べる風景。このキャッチフレーズはなるほどと思わず唸りました。