まるで迷路のように路地が入り組む、大阪・中崎町。
一度歩けば、その魅力の虜になるのは間違いないだろう。
木造長屋のみならず、蔵造りの建物なんかも見られる。
そのどれもがやはり今風のお洒落な店舗だ。
リノベーションが成功したわけ
カフェや雑貨屋、古着屋などショップが立ち並ぶ中崎町だが、民家もそれなりに多い。
この街を好きになった人が、昔からの住人や建物にきちんと敬意を払いながら、うまく溶け込んでいったことが成功の一因だったそうだ。
もちろん都市部なので農村ほど排他的ではないだろうが、新参者がうまくやっていくにはそれなりの難しさがあるはずである。
そのあたりをクリアできたことが、一大リノベーションエリアになり得た最たる理由だったのだろう。
課題もある
とは言え、課題もある。
「観光公害」である。
海外向けの旅行誌やサイトでも「ノスタルジックな町並み」と紹介されている中崎町。
近年、外国人観光客が増えるにつれ、自宅や子供を無断で撮影される地元住民が困っていると言う話を聞いた。
スマートフォンやSNSが普及し、誰でも気軽に情報や写真を発信できる時代。
イイネの数など、人からどう見られるか、そこにしか考えが至らない人が増えているように感じる。
訪れている場所は、誰かが暮らす「生活の場」であるという意識。
無配慮に撮られた路地や家並みの写真に、自分の家族や子供が写っていたら。
それを勝手にインターネットに配信され、不特定多数の人の目に触れることになったら。
確かに外国人観光客はマナーの悪さが目立つ部分がある。
ただそれは、旅先での開放感や非日常がもたらす高揚感も作用しているからではないかと思う。日本人だって、真剣に考えなければいけない問題なのだ。
画一的な高層マンションや商業ビルが乱立。チェーン店が普及し、都市部からは“まちの個性”が急速に失われて久しい。
中崎町のように昔ながらの建物や町並みが残るエリアは、近年観光地としての価値が高まり多くの人が足を運ぶようになった。
人間、誠実で礼節ある素晴らしい人ばかりではないので、多くの人が来るところでどうしても種々の問題が発生するのは致し方ないと思う。
対策不足もひとつの原因ではあるかもしれないけれど、やはり訪れる側がマナーを守って思いやりを持った行動を心がければ、双方が気持ちよくコミュニケーションをとることはできるのではないだろうか。
観光地化した住宅街や集落では、最も大切なことではないかと思う。
話が脱線してしまったので中崎町の路地裏に戻ろう。
どこをどう歩いたのかなんてことはとうの昔にわからなくなっていた。
すでに夕刻を迎え、いつしか頭上では街灯がともっていた。
適当に歩いたからこそ見つけられたような、「隠れ家」と呼ぶに相応しい路地裏の店。
はじめからそこに行こうと思ったら、きっとたどり着けなかったであろう。
やはり超広角レンズを選んでよかった。
いつものカメラじゃこの強烈な路地裏感を伝えるのは不可能だった。
中崎町は、まち全体が迷路だった。
まさしくそこは、“浪速のラビラント”だった。
古い長屋や古民家をリノベーションし、レトロとモダンが程よくミックスされた中崎町。
この独特な町並みが、大阪から一駅の場所にあるなんてにわかには信じられないかもしれない。
大阪へ来る機会があれば、是非中津とセットで足を運んでほしい。
ゆったりとした、どこか不思議な空気が流れる路地裏と下町風景。
中崎町は、そんな街である。
[訪問日:2019年2月11日]
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