銀山温泉に別れを告げ、国道13号線を北へ向け快走するとやがてたどり着いたのは新庄市。
山形新幹線の終点なので名前だけはよく目にするこの地へは、今回初めての訪問となった。
新庄には俗に「万場町遊郭」と呼ばれる遊郭があったというのでその痕跡を探してやって来たというのが訪問の目的。
その万場町は現在でも地名が残っており、駅から見て北西の方角にあたる。
これは付近で見かけた雰囲気のある旅館。
痕跡はほぼ残っていなかった万場町
で、ここがかつて廓のあった通り。地図で並行する路地を眺めると、ここだけ幅員が広いのでふむふむと言った塩梅になる。
もはや遺構らしい遺構は皆無という切ない情報だけを頼りに歩き出したところ、やたら奥行の長い味のある建物が数軒。名残なのかな。よぐわがんね。
毎度お馴染み、昭和5年の『全国遊廓案内』から新庄の様子を引いてみると
新庄遊廓は山形県最上郡新庄町字萬場町に在つて、萬場町遊廓とも云つてゐる。(中略)名は遊廓と云ふ事には成つて居るが、事実上に於ては未だ国道に沿ふた宿場に成つて居る。遠からず完全な遊廓と成る事だらう。(中略)貸座敷は現在七軒あつて、娼妓は全部で二十八人居る・・・本場丈けに「おばこ節」も盛んであるが、里謡に新庄節と云ふのがある。(中略)妓楼は福寿楼、千年楼、常磐楼、立花楼、伊勢屋、松川楼、恵比良楼の七軒だ。
何やら新庄は元々宿場町だったということらしい。そしてそれを示す案内板(棒?)が通りにある。
商店が多く、万(よろず)の店があるので「万場町」と呼ばれるようになったと書かれていた。
往時の面影がないどころか純然たる遊郭ではなかったという万場町において、たぶん唯一残る遺構がこちらの元妓楼らしい「竹本旅館」さん。
とは言え、看板も出てないしもう廃業しているようです。
もう少しだけ寄せてみましょう。確かになんとなく雰囲気がある。
一応まだGoogleMapには旅館の名がついてるけど、これはどう見てもしもた屋。
引き続き付近を散策。
古い木造家屋が残っているあたりが、宿場町として長い歴史を持っていることを感じさせる。
蔵造りのような外観の建物もあったり。じっくり見るとそれなりに味わい深い趣きがある。
そう言えば戦後はどうなったんだと思う方もいるでしょうから、こちらもお馴染み昭和30年の『全国女性街ガイド』より。
庄内おばこの産地。
背が低くて丸顔の典型的な庄内おばこが芸者になって出ているのだが、男の気をそらさぬのが芸者の信条であるとするならまったく落第。そのかわり、情の点では全国中でも指折り。
おばことは民謡のこと・・じゃないですね。ここでは。いかにも、な庄内ガールのことを指すようです。
このあたり、背が低くて丸顔の女の子が多いのでしょうか。よぐわがんね。
さて、もう一軒雰囲気のある町家風の建物が残ってました。
ここまで引かないと全景を捉えられない・・そう、右端の白い蔵までが棟続きになっているんです。
その先は国道458号線。400mほどの短い通りもここまで。
そのまま踵を返す。さて、戻るか。
帰りは一本西側の細い路地を歩いて戻った。
途中で見かけた戦後風の飲食店。
広い通りにぶつかったところに小さな神社があった。
遊郭時代の妓楼にあったものを移したものだとか。地図によると「市神社」とある。
ほぼ何も残ってなかったのとエリアが狭かったことで、淡々と歩いて30分ほどの散策だった。
遊里歩きは、興奮するような遺構に出会うこともあれば、こんな風に空振りに終わることもときどきある。
まぁ、その辺も含めてまち歩きの醍醐味だと思うんですけどね。
[訪問日:2015年5月2日]
〒996-0024 山形県新庄市多門町1 新庄駅
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