2015年夏。5泊5日の青森旅行。
その中で、二番目に楽しみだったのがこの着いて早々足を運んだダイサンこと「第三新興街」であった。
最果てのユートピア
駅に近いほうの入口から入ると、突き当たりで右に90度折れる。その先を右に曲がるとアーチがあるもう一本の入口へといたる。(次の写真)
左へ曲がると(写真右奥)反対側のアーチへと抜ける。
すべての路地を歩いてもおそらく2分とかからないであろう。それだけ密集度合いが半端ないことを意味する。
しかし、不思議なものである。
目の前には津軽海峡が広がるこの本州最果ての地で、今まで各地で幾度となく眺めてきた青線的盛り場に出会うことに、何とも言えない不思議な感慨を覚えた。
それは、たとえどこであろうと、男と女がいる限りそこで行われる営みは古今東西共通であるということの証でもあり、取りも直さずあまたの男は好色だったということに他ならない。
そんな哲学じみたことを考えているうちに気づいたら反対側(東側)のアーチへ抜けた。
しかしこのアーチがまたカオスである。鉄パイプのようなポールは途中で90度曲がり鉤型をしている。しかもそれは片方しかない、ときている。
空き地のおかげで見通しがよく、バラック群の側面がよく見える。まるで小学生の工作のようなクオリティである。高名な建築家も思わず唸るレベルだと思う。
あまりに呆気なく散策が終わってしまったのでもう一周してみることにする。
どうやらここは店主の住空間も兼ねているようで、ところどころドアが半開きになったりテレビの音が漏れ聞こえたりと、生活感丸出しであった。
幅狭な路地に3階建てのバラックが立ち並び、しかも二階より上方が路地に張り出しているせいで物凄い圧迫感を受ける。
これを見てここが雪国であることを思い出した。
極寒の冬に訪れれば、骨身に沁みる寒さを和らげるために人肌に身を委ねる男たちの姿を垣間見ることができるのだろう。
それはもう理性では抗することのできない類のものであると思う。大自然の前では人はあまりにも無力である。
最果ての地で生きる人々の色欲がこびりついた路地は明らかに妖艶で異質な雰囲気を醸していた。それこそ何十年にも渡って地層のように複雑に重なり合っていて、それは同時に人間の業の深さが顕現したものだと結論づけてもよいのではないか。
駅近の一角にも、昭和の残滓はまだしぶとく根を張り続けていた。
はるばる青森まで来た甲斐があったと思わせるに余りある素晴らしい路地裏風景がそこにはある。
北海道新幹線で函館に行こうという方がいれば、津軽海峡を渡る前に是非とも青森で下車し一日滞在することをお勧めしたい。
[訪問日:2015年8月12日]
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