落ち延びるためにはこういう場所を選ぶしかなかったのかもしれない。
壮絶なる源平合戦の果てに、勝利を収めた源頼朝が鎌倉幕府を開いたというのは誰しもが知るところである。一方、敗れた平家は人里離れた山奥や離島など各地に落ち延び、伝承となってまことしやかに語られる素因を作り出した。俗に言う「平家の落人伝説」である。
その「落人伝説」を観光資源としてPRする場所が栃木県日光市にある。
周囲を容赦なく山に囲まれた完全無欠の陸の孤島、「湯西川温泉」。昨年大氾濫を起こしたあの鬼怒川の源流からほど近いところである。
最寄りとなる野岩鉄道の「湯西川温泉駅」には日帰り温泉が併設された道の駅がある。今年2月、電車を乗り継いでこの秘境にやって来た。
そこは完全な僻地だった
その名のごとく、湯西川の渓谷沿いに旅館が立ち並ぶ温泉街である。泉質も単純アルカリ泉と、温泉にうるさい筆者の目を引くような代物でもない。
目的は他でもない。毎年冬に行われる「かまくら祭」を見に来たのだ。
その話は後に譲るとして、平家の伝説が残るという温泉街の町並みをまずは見て行きたい。純朴で心がほのぼのするまさに隠れ家的風情をたたえていた。
この地へ落ち延びた平家の残党は、追っ手に生存を悟られぬよう「鯉のぼりを上げない」「焚き火をしない」「犬や鶏を飼わない」という独自ルールを貫いていたという。
絶えず我が身を案じながら、生涯肩身の狭い思いをしながら生きねばならなかった平家の心中はいかほどであろうか。
しかしそれによって、これほどの僻地に秘湯と呼ぶに値する、情趣に富んだ温泉郷が出現したのである。
先人たちの苦労は無駄ではなかったのだ。
昨冬は記録的な暖冬だったためこれでも雪が少ないほうである。元来雪深いところなのだ。
白い世界は完全に外界から隔離され、交通が通じていなかった時代は文字通りの陸の孤島だったに違いない。
湯西川は、温泉旅館としてのキャパシティは決して低くはないが、かまくら祭が開催される時期に限っては、週末ともなれば早い時期からどこも満室となる。早め早めの行動を心がけたいところである。
ちなみに、マイカーであれば問題ないが、交通の便が悪いので日帰りや日光あたりに泊まる、と言った技は使えない。
このかまくら祭も、もうずいぶん前から行きたかったものの、期間の短さと遠さからついつい後回しになってしまっていた。
雪不足でイベントの開催が遅れるというアクシデントに見舞われたが、どうしても今年行かなければいけない事情ができたため、なんとかこうして天候にもそこそこ恵まれた中来ることができて本当によかった。
平家ゆかりの集落と言うからには、例えば茅葺き屋根の民家などを予想した方もいるかもしれない。後ほど紹介するが、実は「平家の里」という往時の集落が再現された民俗村がすぐ近くにある。
せっかくイベントの時期に来たのでかまくらも掲載しておこうと思う。
これだけでかいのを実物で見たのはさすがに初めてな気がする。
何も横手まで行かなくても十分ではないか。
中は畳とこたつでいたく現代風になっていた。
ぐいっと熱燗でも煽りたい雰囲気である。
さて、そんなわけで「平家の里」である。
が、ここがイベントのメイン会場になっていたため、残念ながら夜しか入らなかった。
そんなわけで、夜景から雰囲気を感じ取っていただければと思う。
ここでは予約制の「かまくらバーベキュー」が楽しめる。かなりの大盛況だったそうである。
イルミネーションやライトアップは綺麗なことは綺麗だけど、朴訥とした山村集落の風情はあまり感じられなかった。やはり来るなら昼間であろう。
鎌倉時代と言えばもしかしたらまだ灯火具もなかったのではあるまいか。ましてやこの山中である。夜は死ぬほど暗かったに違いない。
再現された往時の建物を前に、しみじみと思った。
最後に。これがイベントの目玉となっている「ミニかまくら」。
中にはろうそくが入っていて、まさに「1/fゆらぎ」のリラックス効果を体験することができる。
これが河川敷を埋め尽くす光景は圧巻の一言に尽きる。
他にも、ファミリーで楽しめるスノーパークやお寺のライトアップ、食べ物も含め、色々楽しめるイベントになっている。
何より、旅館での郷土料理と雪見風呂は格別である。
公共交通機関でもアクセス可能な湯西川温泉。来年は是非足を運んでみてはいかがだろう。
[訪問日:2016年2月13日]
コメント
昔は日帰りツ-リングで、そちら方面はよく
走ったな~。
大川林道とか塩那林道とかも、、、
日帰りにしては結構遠いですね・・^^;