諏訪から19号線を北上し、やって来たのは城下町松本。国宝松本城を擁する、長野第二の都市である。
と言っても別に松本城を見に来たわけではない。「西堀」なる場所にあった赤線地帯の今を見に来たのである。
時は17時。既に夕刻である。日が長い時期とは言え、あまりのんびりしてもいられない。急がねば。
その場所は松本城の南西側、大手二丁目に位置する。お堀の西側。そのまんまの名前である。
近くにはかつての土塁を保存した「西総堀土塁公園」があった。
この規模の城下町なので別に驚きはしないものの、松本は昔から遊里が多い土地柄で、まず郊外の横田町に遊郭があった。他にも花街がふたつ、戦後は赤線も二ヶ所あったそうである。
そのうちのひとつ、「土井尻」がこの日見に来た「西堀」のことである。
果たして、東西に伸びる幹線の一本南の路地にそれはあった。明らかに、あたりを包む空気が夜の街のそれに変わり始めたそのとき、それは突然姿を現した。
どーん。
妓楼風の建物を眺める
もはや他の追随をまったく許さないほどの存在感。そろそろ妖気を放ち始めそうなほどのくたびれ具合。コイツ・・・只者ではない。
まるで売春防止法など歴史上存在しなかったかのように、今なお現役で稼働してそうな雰囲気すら漂っている。
そして、前に立つと気がつくのだが、この建物、真ん中が通路になっていて裏側に抜けれるようになっている。
ところが、である。
通路の突き当りに、戦場の衛兵よろしくおじーちゃんが椅子に腰掛けて訝しげにこっちを見ているではないか。
傭兵がいたなんて話はまったく聞いてない。
この状況下でのこのこ写真撮り歩いたりしようものなら竹槍で刺されるかもしれない。
仕方ない。別ルートで潜入を試みる。
なんだよこの下町感満載な路地は。どう見ても不審者じゃないか。
抜けた先にはスナックが占拠するソシアルビル。ここから例の伏魔殿のほうを盗み見ると、衛兵がこっちを見たので慌てて隠れた。
松本まで来て一体何やってんだ俺は・・
きっと数々の修羅場をくぐり抜けて来たのだろう。老兵を侮ってはいけなかった。だてに歳はとってない。
これは負け戦だ。潔く引き上げよう。
と、見せかけて暗くなってから再び参上w
妖しげなネオンが舐めるように路地を照らしている。いや、きっとこれは罠だ。近づいたら矢が飛んでくる仕掛けに違いない。
現存天守のオリジナルに違わず、大人の松本城もまた難攻不落の城塞だった。
兵力を増強し、いつの日か奇襲を試みよう。
完
[訪問日:2016年5月31日]
コメント
まだ、残っていたんだ~!この建物。
私が探索したときは、隣の駐車場の先にたしかトルコがあったような、、、
、、、最近歳のせいか
記憶があいまいです。
トルコはなかったですねぇ・・流石に。それはたぶん10年以上前の話だと思ってます 笑