驚いた。
いや、そんな生ぬるい言い方ではダメだ。
全米が震撼した…何ていうかもうそれぐらいの衝撃だった。
それがこの、和歌山市にある「七曲市場」に足を踏み入れたときのファーストインプレッションだった。
外観の渋さがすでに尋常じゃないレベルである。まるでどこかのダンジョンみたいだ。
ダンジョンへ入ってみた
訪れたのが祝日だったせいか時間が早かったせいか(9時半頃)定かではないが、営業している店はただの一軒もなかった。
おかげで散策も非常にやりやすかった。
まず、ここがどういうところなのか簡単に説明しよう。
七曲市場(ななまがりいちば)は昭和32年に設立された市場で、つまり今年が60周年。安くて新鮮なことで有名で、今でも普通に地元の人に愛されている超老舗商店街である。
場所は和歌山市駅から南へ1.5kmほど。徒歩なら20分というところだろうか。
今まで“こういうところ”をいくつも見てきたが、そのほとんどがご多分にもれず廃墟かその一歩手前という、「商店街」ならぬ「昇天街」でしかなかった。
だが、店の数こそ減ってしまったものの今でも活気があるというのは、シンプルに驚きに値する。
最初、写真をモノクロに統一しようと思ったものの、できるだけリアリティを持たせるためにそのままにした。「しっかり伝えたい」と思えるほど素晴らしいところだったからである。
っていうか映画のセットなんでしょ?こんなところが今の時代に残ってるわけないじゃん。
これを見ると本当にそう言いたくなってくる。でもこれがありのままなのである。
ここにいる間、あまりの素晴らしさに身震いが止まらなかった。商店街を見て感動したことなんて今まであっただろうか。
七曲市場は東西南北に入口がある。確かこれが東口だったと思う。
営業している店舗は約20店。全盛期には100店ほどがあり、連日押すな押すなの大盛況だったそうである。
当時はでかいスーパーなんてなかっただろうし娯楽も少なかったはずだから、主婦にとっても子供にとっても商店街は楽しいところだったのだろうと思う。いい時代である。
この七曲市場では、昨年夏に台湾と和歌山の文化が体験できる「わかやま夜市」というイベントが開催され、凄まじい賑わいを見せたそうである。行ってみたかった。
七曲市場で開催のわかやま夜市、スゴいにぎわい。夕方には売り切れの店も>_<雄湊公園の駐車場をご利用ください pic.twitter.com/kjcUUWUIUO
— WBS和歌山放送 (@wbsradio) September 4, 2016
こうして現地でのことをあれこれ振り返ってみると、休業日だったことがあまりに悔やまれる。平日だったらよかった。
迷路のような細い路地もある。
人と人との触れ合いで成り立つのが商店街。笑いあり人情あり、店主と客、近所の人同士の交流の場でもある。
何でも買えるロードサイドの大型スーパーマーケット。レジ係のアルバイト店員と世間話をする人がいるだろうか。そこで近所の人とたまたま出会って立ち話をしたりするだろうか。
いや、それなどまだいいほうかもしれない。買い物はネットで済ませ、家から出ないなんて人も現代ではザラである。
商店街の衰退とともに、失われてしまったもの。もしかしたらその代償はあまりに大きいものなのかもしれない。
自分自身が、生まれてなかった昭和30年代頃に強い憧憬の念を抱くのは、このあたりも理由のひとつだったりする。
皆一様に貧しかったが、頑張れば豊かになれると信じて希望を持って生きていたし、互助の精神にも満ち溢れていた。
現代はモノが溢れ、情報が溢れ、嗜好や価値観も多様化し、人間関係は以前より希薄になった。いや、主に都市部だけかもしれないがそういう時代だと思う。
「昔はよかった」を否定する人も中にはいるが、筆者は絶対昔のほうがよかったと信じる立場である。
憧れの時代を生きた人たちがいる場所、その人たちが作ってきた場所だからこそレトロ商店街に惹かれるのだと思う。
商店街のレポートのはずがいつの間にか「昭和概論」的な話になってしまったことをお詫びしたい。
ただ、七曲市場へ行ったことで色々なことを考えさせられたのは事実である。一人でも多くの方が現地へ足を運び、何かを感じ取っていただければ幸いである。
[訪問日:2016年10月10日]
コメント
七曲署、、、おもだすな~!
太陽にほえろ!ですよ。50歳から上はネタになります。
ヤマさんが渋くてね。
あ~そういうことですか!一瞬ここが名前の由来になったのかと思いましたw
太陽にほえろ!はさすがに世代じゃないですねぇ。