ひがし茶屋街、にし茶屋街が有名な古都・金沢。
両者と比べると知名度はやや落ちるものの、金沢にはもうひとつ、「主計町(かずえまち)」という茶屋街がある。
この三ヶ所をもって、俗に三大茶屋街などと呼ばれたりもする。
場所はひがし茶屋街の目と鼻の先。浅野川を挟んだ反対側に位置する。
主計町の歴史
成立は明治2年。ひがし茶屋街のところでも少し触れたとおり、はじめは遊郭だった。
その後、徐々に花街色が濃くなっていき、旦那衆の粋な遊び場として昭和初期まで大いに栄えることになる。
名の由来は、このあたりに加賀藩士・富田主計(とだかずえ)の屋敷があったことにちなむんだそう。
1970(昭和45)年に「尾張町2丁目」となったものの、1999年に再び主計町になり、これが全国初の旧町名復活という歴史的な事例になる。
「東山ひがし」から遅れること7年、2008年には市内二ヶ所目の重要伝統的建造物群保存地区にも選定される。(種別は「茶屋町」)
浅野川沿いに続く石畳の路地に沿って、料亭や茶屋が立ち並ぶ光景は実に風情があって趣深い。
主計町の町並み
一言で言えば「風情」と「情緒」である。
人混みにげんなりするほど観光地化してしまったひがし茶屋街のあとに来ると、雅な雰囲気が滲み出た閑かで落ち着く、純和風な町並みを見ることができる。
浅野川沿いには、明治後期から昭和にかけて3階建に増築された建物が多い。
川を望む景勝地ならではの形態と言えよう。
そもそも成立が遅かったこともあり、江戸時代の建物は皆無。現存するものも、おそらくそのほとんどが明治後期以降ではないかと思われる。
主計町の場合は、建物よりも町並み、風情にその価値があると個人的には思う。
まるで個人宅の敷地にずかずかと入って行くような細い細い裏路地へ分け入ると、その意味がよくわかる。
昼間でも仄暗い、まるで魔窟のような路地裏。
この、デフォルトでインスタ映えしてしまう最強の雰囲気。
ここを和装の芸者さんが歩いている姿を想像すると悶々して夜も眠れなくなりそうなのである。
…恐るべし主計町。
つまるところ、デートで金沢に行くならひがし茶屋街よりも主計町を推したい。
そのときは、コスプレでもいいから是非浴衣や着物で行ってほしい。
カメラに向かって恍惚の表情を浮かべる彼女に、きっと彼氏は惚れ直してくれるだろう。
って…何の話をしてるんだっけ(´・ω・`)
あぁそうだ、町並みの話だった。
茶屋街の話をすると、お茶屋は現在4軒。
公式サイトを見ると、芸妓は8名が在籍しているようだ。規模的には三ヶ所の中で最も小さい。
石川県の料亭の鑑札は緑色をした楕円形。
個人的には、京都の縦書きの「お茶屋」よりこっちのほうが好み。
暗がり坂とあかり坂
主計町には、「暗がり坂」と「あかり坂」という何ともそそられるふたつの坂道がある。
裏路地さながら、今度は人んちの裏庭にでも入って行くかのような雰囲気。
しかも坂道じゃなくて階段じゃん・・とここで全力でツッコみを入れた。
こちらがあかり坂。
金沢にゆかりのある、作家の五木寛之が命名したという坂道(階段)がそれ。
階段から茶屋街を見下ろす風情がまたたまらない。
いずれの坂も、人目を忍んで茶屋街に通う粋人に利用されたというエピソード通り、隠れ家感満載の素敵な場所だった。
散策される際は是非歩くことをオススメしたい。
暗がり坂を上りきると、作家・泉鏡花の生家があった場所に出る。
現在は泉鏡花記念館となっているので、興味のある方は併せてどうぞ。
紹介してきた主計町は昼間、しかも雨だったが、夜の雰囲気もまた格別。
ひがし茶屋街と併せて、是非夜も足を運んでみてほしい。
[訪問日:2017年5月6日]
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