道すがら、西尾市の一色町にあった特殊カフエー、「睦荘」を見ていくことにした。
一色町はうなぎの養殖が盛んなまちで、かつては、2004年に廃線になった名鉄三河線が碧南から通じていた。
カフエー街は、今はなき三河一色駅と西一色駅のちょうど中間ぐらいにあった。
西尾市に来たのはこれまで一度もなかったように思う。
景色、空気、五感にとってすべてが新鮮だった。
「十一屋」という元料理屋の建物はまだ残っていた。
店を閉めてから何度同じ季節が巡ったのだろうか。
自分がここに立ち続ける意味を問うことすら放棄して久しいように映った。
入口の扉には板が打ち付けられ、万人の来意を分け隔てなく拒んでいた。
以前、勝手に侵入する阿呆がいたのかもしれない。
用水路を渡り、かつて町の中心部だった商店街のほうへ向かう。
このあたりは戦火に遭わなかったのか、そこかしこに古くて味のある建物が残っていた。
睦荘のカフエーは一箇所に固まっていたわけではなく、やや広いエリアに散在していたようだ。
目当ての建物が残っていたのでまずはよかった。
妓楼というよりは料亭のような佇まいだが、界隈で最も雰囲気を残していた。
どうも睦荘は赤線になる前は花街だったのではなかろうかと思う。
カフェに転用された古民家。
※カフエーじゃなくてカフェです
「花月」の屋号だった元カフエー。
現在も住人の方がいらっしゃるようで、屋号が残っていてもほとんど普通の民家にしか見えなかった。
一体どのへんが中心だったのか、メインストリートすら存在しない睦荘の路地を彷徨う。
この更地には、近年までスナックとかつてカフエーだった旅館が立っていたとのこと。
そして、同じく斜向いにも検番だった建物が(残っていた)。
一足遅かったようだ。
遊里につきものの稲荷神社。
この真向かいの建物も元カフエーだそうだがカメラに収めていなかったようだ。
地図がなければ二度と戻ってこれなそうな路地を進む。
これも関連物件かな。
何かの商店だったであろう強烈な建物が出てきて衝撃を受けた。
右隣は、いかにも赤線を思わせる赤いタイルの円柱を設えたこんな建物が。
用水路に面した旅館つたや。
すぐそばには元割烹店だったような佇まいの定食屋「松葉屋」が残る。
丼ものやうどんが食べられるそうだ。
うなぎにありつけなかったことだけが心残りだった。
幸い、西尾に行く用事が現時点でひとつあるので次の楽しみにしておこうと思う。
[訪問日:2020年12月28日]
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