佐賀県の北端に「呼子(よぶこ)」というイカと朝市で有名な港町がある。
古くから天然の良港、また風待ち潮待ちの港として栄えた海上交通の要衝だった町だ。
絶品のイカを食べに、7年ぶりに呼子を訪れた。
前夜はこの近くに泊まっており、運悪く台風にロックオンされたが夜半に通り抜けてくれたために事なきを得た。
しかし朝から空が重く、雨がぱらぱら、時折風も強い。こんな日にまち歩きとかなんなんマジで。
全部台風のせいだ。
とは言え、港を眺めながら最高に旨いイカ丼を食べてたらようやく旅人のスイッチが入って来た。
さて、行くか。
まず朝市通りを散策してみた。天候のせいかなんなのか、人通りもまばら。開いてる店も少なかった。
脳内では輪島の朝市をイメージしてただけに少々ガッカリしてしまった。
(いや、きっと普段はもっと活気があるはずだ…)
遊郭のあった殿ノ浦地区
呼子港は入り江になっており、湾を挟んだ対岸「殿ノ浦(とんのうら)」という地区には昔遊郭があった。(朝市通りの北側にもあったそうだが未確認)
そのあたりをぷらぷらと歩いてみた。
国道から集落へと向かう分岐。
さっきまで小康状態だった雨が突然勢いを増してきた。
くそう裏目った。
イカ丼、後にすればよかった…。
すぐに、殿ノ浦地区の産土神である田嶋神社が顔を出す。
案内文を読むと、境内には稲荷神社もあるらしい。
確かにあった。
きっと遊郭があった頃は遊女の篤い信仰を集めていたに違いない。
(それとなく名残を探してみたけど見つけられなかった)
『全国遊廓案内』には呼子町遊郭で記載があり、「妓楼は約十四軒、娼妓約百三十人」と現状を目の当たりにすると信じられないような数字が書いてあった。
昔はそれほど港が栄えていた証拠なのだろう。
スナックのような店が一軒だけあった。
ちらほらと空き地もあったりと、あまり町に元気がない感じを受けた。
このゆるいカーブがどことなく色街っぽさを醸し出している。
右側のこの建物は以前は旅館だったそうだがすでに廃業していた。
これも元ホテルのようだが廃業をはるか通り越して廃墟になっていた…。
何年放置されているのか見当もつかないほど風化が進んでいる。
集落もそろそろ終わりを告げようかというだいぶ奥まった場所に、二軒の旅館が絶賛営業中だった。
ここ殿ノ浦の遊郭は格式が高く、富裕層たちが対岸から手漕ぎの舟で遊びに行くような場所だったそうだ。
もう一軒が清力旅館さん。
華やかだった時代も今は昔。
殿ノ浦地区は、寂れた町並みだけが印象に残る夢の跡でしかなかった。
最果て感満載の辺境の地で風雨に煽られながら、朝っぱらから寂れたまちを歩く。
俺こんなとこで何やってんだろう…。
思考が際限なくダークサイドに堕ちていくのをこのときばかりは止められなかった。
旅において、いかに天気が生命線であるかを痛烈に感じた呼子散策だった。
今度は晴れた日に来たい。
次はないような気もするけど…。
[訪問日:2018年8月15日]
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