春雨通りを走る長崎の路面電車。
思案橋電停の「思案橋」は、かつて同地に架けられていた橋にちなんでいる。
どこにそんな橋が・・?
ハイカラなアーチがあるだけで、どこを探しても橋などない。
実は、橋があったのはかつてここを流れていた銅座川。現在は暗渠化されており、そこに現在の思案橋横丁がある。
思案橋横丁
という訳で、東側から横丁を歩いてみよう。
ちなみにこの横丁をまっすぐ行くと、柳小路から出てくる路地にぶつかる。両者は繋がっているのだ。
思案橋横丁は、ほとんどが飲食店や飲み屋。
観光客はとりあえずここで食事しとけばいいよね?的な雰囲気を感じさせる通りである。
それなりに古そうな建物はちらほらあるが、そこまで目を引くような代物でもない。
とは言え、全体的な雰囲気は悪くない。
うたた寝中の三毛猫に出会った。
人馴れし過ぎてるのかよっぽど眠かったのか、カメラをギリギリまで近づけてもまったく微動だにしない。
このあと通りすがりのカップルにめっちゃなでられてたけど、「昼寝の邪魔すんなよ馬鹿野郎…」って思ってただろうな絶対。
端から端までつるっと通り抜けてはいおしまい、みたいな物足りなさを感じたのなら、ちょっと待ってほしい。
思案橋横丁の本当の顔は、この通りではない。
実は、春雨通りとの間にもう一本路地がある。
本物はそっちである。
ハモニカ横丁
どうであろう。建物ひとつ隔てて、これほど景色が一変する場所が他にあるだろうか。
あぁ、異世界への入口は長崎にあったのか。
この通り、巷では「ハモニカ横丁」と呼ばれている。
何やら吉祥寺のハモニカ横丁に由来しているという説もあるそうだが、今ではこの呼称はあまり一般的ではないとのことだ。
空を見上げれば青空が広がっているというのに、幅2mの路地にはまったく陽が当たらない。
昼間でも身震いしたくなるほど空気が淀んでいる。
ここへ来たのが夜だったなら、底なしの闇に身体ごと沈められていたかもしれない。
柳小路でビビっていたが、あちらのレベルをはるかに凌駕している。
この横丁は、歴史をたどれば戦後の混乱で春雨通りに闇市が発生したことに端を発する。
露店を一掃するために銅座川を暗渠化し、その上に移動させたのだそうだ。
前回触れた銅座市場もそういう経緯で誕生している。
出来た当時は今いる細い路地のほうが店の正面で、春雨通り、思案橋横丁側が裏だったと言うからビックリする。
やがて自然と表裏が反転していき、今ではすっかり陽の当たらない裏口の集合体だ。
“暗渠”
つくづくワクワクする言葉だと思う。
この下に川が流れていた。それだけでロマンを感じずにはいられない。
こんな路地裏には異常なほどカブがよく似合う。
横丁の共同便所は、店で鍵を借りなければ開けられないシステムだった。
夜だけ開放する、と言うのは見たことがあるがこれはめんどくさそうだ。。
春雨通りと思案橋横丁。
双方の建物が背中合わせとなったハモニカ横丁。
グラバー園や稲佐山もいいが、長崎に行ったらいの一番に見てほしいと思える素晴らしい景色がそこにはあった。
[訪問日:2019年10月12日]
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