我が国には優れた陶磁器の産地がたくさんある。
「○○焼を思いつく限り挙げよ」
なんてお題を出されて、ひとつも出せない人はいないのではないだろうか。
それほど日本には焼きものの文化が根付き、我々の生活に欠かせないものとなっている。
とりわけ、六古窯と言われる鎌倉時代以前より続く窯業地は有名である。
そのひとつ、岡山県の備前市で焼かれるのが「備前焼」だ。
備前焼の産地、備前市の伊部(いんべ)地区には今も古き良き風情の町並みが残っている。
窯元を訪ね歩いて一点物を選ぶことはもちろんだが、散策するだけでも楽しいまちである。
JR伊部駅から北へ2~3分も歩くと旧山陽道、西国街道に出る。
備前焼の窯元やギャラリーはこの旧街道沿いに点在している。
駅前には「備前伝統産業会館」と「備前市立備前焼ミュージアム」があるので、備前焼の何たるかを知りたい人は足を運んでみるといいだろう。
この日は着いたのが16時前ぐらいだったのでどちらも立ち寄れなかった。
というか、日没まで一刻の猶予もないような状況だった。急がねば…。
備前焼を知る
ところで、備前焼とはどんな焼きものかご存知だろうか。
一般的に、焼きものは「陶器」と「磁器」に分かれる。
違いは原料で、成分が土由来か石由来かで区別される。
以前有田の記事で似たようなことを書いたが、磁器で有名なのはその有田焼や石川の九谷焼。
全国的には陶器のほうが多い印象である。
で・・
備前焼はと言うと、陶器と磁器のハイブリッドのような性質をしている「炻器(せっき)」と呼ばれる焼きものであるそうだ。
焼きものは、一般的に耐水性や光沢を出すために釉薬を塗って焼き直すが、備前焼は土の性質上釉薬を使わずとも高温で焼き締めることで高い耐水性を出すことができる。
ゆえに、いかにも「土ッ!」という感じの素焼き風の茶色が特徴である。
この潔さというかシンプルさに魅了されるファンが多いのだそうだ。
わかる気がする。
備前焼と言えば、人間国宝にもなった金重陶陽が有名だが、同じ名を冠した窯元があった。
「まさかね」なんて思ったけど、あとで調べてみたらその金重の本家の窯元だった。
多くの窯元は特段古い建物ではないが、茅葺き屋根や白壁の土蔵なんかも点在して旧街道らしい風情は感じられた。
せっかく来たんだし何か手土産に買って帰ろうか、なんて思ってはみたものの・・
素人なんで格付けも分からなければ備前焼の相場感もピンとこない。
想像よりゼロが2つぐらい多かったとしたら、「お、おぅ・・」と内心狼狽えてるのに「いやぁ、ちょっとビビッと来るのがなかったかな」みたいなポーカーフェイスで店を出なければならない気がする。(小物感)
そして、店内が客で賑わってることが基本ないので、入店 → 高確率で話しかけられる → 色々話を聞く → 「ちょっと他の店も見てきます」なんて言いづらい雰囲気になる
っていうパターンになりやすいと思う。(実際なったw)
まぁ、いかにも観光客向けって感じのカジュアルなお店もあるので、雰囲気とか色々見て決めればいいとは思うけど。
筆者は結局最初に入ったお店で湯呑みとぐい呑みを購入した。
確か2つで4千円ぐらいだった。
本当に素焼きっぽくてざらざらした質感が気に入ってるんだけど、特にぐい呑みは色んなところで買っちゃうので残念なことにあまり出番が来ない(笑)
さ、与太話はそんなところにしときましょうか。
煉瓦の煙突がいかにも焼きもののふる里って感じですごく風情のある駅前通り。
時折こんな感じの伝統的建造物に出会う。
多くが大正~昭和頃の建築だろうか。
ただ、新しい建物も景観を害するような意匠や配色はしておらず、全体的に調和のとれた町並みを展開している。
奇抜と言えば奇抜だったのはこのギャラリーぐらいかな。
古びた建物は見るだけで楽しい。
この天津神社は宮司が陶芸家だそうだ。
狛犬ももちろん備前焼。
いかにも焼きものの里と言った感じがいい。
!!?
窯焚きの最中か、赤煉瓦の煙突からモクモクと煙を吐き出す場面に運良く遭遇。
風情ありますなぁ。
1200〜1300度の高温で約2週間焼き締める備前焼は「投げても割れない」と言われるほど頑丈で、古くから大きなかめや壺が多く作られてきたと言う。ちょうどこんなやつだろう。
(´-`).。oO(このサイズだと相当高そうだな)
六古窯にも数えられる備前焼。当然そこには栄枯盛衰の歴史があって、江戸時代中期、大量生産に対応していた大型窯から効率を重視した小型窯へ移行。
天保年間に作られたので「天保窯」と呼ばれる窯のひとつが、史跡として残っている。
大型の頃は35日ぐらいかかっていたのが2週間ぐらいに短縮され、大幅な効率化に成功。
この窯は昭和初期頃まで、およそ120年間使われたようだ。
毎年10月には「備前焼まつり」が開催される備前焼の里、伊部。
土ひねり体験なんかもできるようで、備前焼に興味のある方は現地に足を運んでみてはいかがだろう。
[訪問日:2020年12月12日]
コメント