以前奈良の上市のことを書いたときに、吉野川の対岸にある下市についても少し触れた。
余談だが上市に対して「下市」もあり、こちらはもう少し下流の山側にやはり「願行寺」という寺を御坊として発展した。
下渕マーケットを見学したあと、そのまま川向こうの下市の町並みを見に行った。
上市も下市も、その名のとおり市場町が起源である。
下市はおもに吉野地方の森林資源を取り扱う市で、16世紀には我が国初と言われる商業手形、「下市札」が発行されるほど賑わったそうだ。
“吉野の商都”と呼ばれた由縁がこれである。
願行寺の寺内町としても発展し、江戸時代には大峯参りの宿場町として栄えるなど常に繁栄と隣り合わせの歴史を歩んできた。
(大峯山への登山口でもある洞川温泉へは下市口からバスが出る。下市は今も変わらず大峯の玄関口だ)
そんな下市を歩くと、今でも重厚な商家のような伝統的建造物がちらほらと見られ、それ以外にも昭和の名残を強烈に感じさせる味のある木造建築やレトロな建物が数多く残っている。
今にも雨が降り出しそうなあいにくの天候だったが、まぁ暑いよりかは全然いい(この日は9月下旬)
静かで落ち着いた町並みと言えば聞こえがいいが、筆者が好むような建物ばかりと言うことは裏を返せばまちから活気が失われていることと同義である。
そんなことをぼんやりと考えながらも、視界に飛び込んでくる建物は実にバラエティに富んでいて純粋に歩いていて楽しい。
うはぁ…(語彙力)
直感的に“何かある”と感じ、Y字路を来た方角へ戻ってみる。
なんとそこには・・
創業800年。源平歌舞伎「義経千本桜」の舞台にもなったと言う現存する最古の寿司屋・・その名も「つるべすし 弥助」。
鮮やかなベンガラ色。すご・・まるで妓楼みたいだ。
ぱっと見、料亭だと思ったんだけどお寿司屋さんでしたか。
一度ここで食事してみたいもんだ。(純粋に中を見てみたい…w)
渡り廊下でつながった離れのような建物が見える。
建物自体はかなりでかそうだ。
再びもと来た道へ戻ってきた。
この道が国道309号線で、下市のメインストリートだと思っていただければ間違いないと思う。
うひょ~(語彙力)
そして・・ヤツが現れた。
下市のランドマークとも言える、旧「なか家旅館」である。
かつては二階の窓のところに袖看板がついていたようだ。
実は下市をちゃんと歩いてみようと思ったきっかけがこの建物なのである。
以前薄暮の時間帯にここをクルマで通過したとき、闇に呑まれていくこの建物のシルエットを視界が捕らえ、文字通りのディープインパクトを受けたのだ。
!!?
な、なんだあれは・・
そのとき、せめてあと30分早ければ・・と悔やんだがどうしようもなかった。
八幡神社の参道を少しだけ上ってみる。
なお、なか家旅館さんの対面にもかつて洋風の洒落た建物があったようだが今は更地になっている。
せっかくなので2013年のストリートビューを貼っておこう。
銭湯もあるよ
いや、正確には「あった」だろうか。
「日の出湯」と言う、元銭湯の建物がそのまま残っていた。
日の出のデザインがすごく秀逸。
国道の西側には川が並行しており、下市にはこんな感じの『崖っぷち建築』が数多く見られる。
どの橋からもフォトジェニックな風景が楽しめるので、しっかりチェックしておきたいところである。
クルマを下市口駅の近くに停めていて、すでに結構な距離を歩いて来ていたのでこの後国道を少し歩いてお開きにしてしまった。
日の出湯さんの目と鼻の先に御坊の「願行寺」があったこと、さらにそのすぐそばには重厚な建物の造り酒屋があったことを知ったのはずいぶん後になってからだった。(町並み界隈あるある)
もう少し時間に余裕があって、すべての路地を歩き切るぐらいの勢いで行っていたらまた結果は違ったのかもしれないけど、それでも十分満足の行く町並みだった。
オススメですよ、下市。
[訪問日:2020年9月26日]
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