久しぶりに神戸の市場の話を。
「稲荷市場」なるものの存在を誰かに教えてもらい、初めて聞いたこともあってどんなところだろかと行ってみることにした。
場所は神戸駅から南へ10分ほど歩いた、川崎重工の近く。
ハーバーランド駅からいそいそと歩き出し、この辺は一度も来たことないなぁ、などと思いながら2号線を渡る。
おもむろに路地に身を委ねると、下町然とした香ばしい風景が眼前に現れた。
何も考えずに路地を彷徨うとき、不思議と五感が研ぎ澄まされていく感覚に包まれる。
日々の生活でくたびれた心の澱が、名もなき古民家を眺めることで洗われていく。
自分の人生に路地歩きが必要なことを再確認したところで目的地にたどり着いた。
松尾稲荷神社。ひとまずここを目指してきたのは、市場のすぐそばということに加えもうひとつ理由があった。
なんとこの松尾稲荷神社。社殿の奥にビリケンさんが祀られているのである。
ビリケンと言えば大阪の通天閣が有名だが、そもそもがアメリカ渡来の福の神で、神戸のは大正末期に洋食屋から奉納され、以来ここに鎮座しているとのこと。
つまり、大阪を差し置いて日本最古のビリケンの称号を持つ実はすごい神社なのだ。
稲荷市場
さて、その松尾稲荷神社の真横が、名の由来が稲荷神社からと言う「稲荷市場」の入口。
だが、どうにも市場っぽくない。
実は、元々はアーケード商店街だったのが近年撤去解体され、現存するのが一番南側のこのあたりだけという至極残念な状況だったのである。
ストリートビューで最も古い2009年まで時間を巻き戻したら在りし日の姿を拝めた。
今の姿からはなかなか想像ができないが、失われたことが実に惜しいと思えるアーケードである。
青空市場となった稲荷市場を歩いてみる。
右手の商店は現役。あとはシャッターが閉まってよくわからない。
稲荷市場きっての名物店、ホルモン屋さんの「中畑商店」。
残念ながらこのとき臨時休業中だった。
中央部分は左右ともごっそりと持っていかれてしまい、もはや市場と呼べる代物ではなくなっていた。
躯体が残る北側もシャッターが閉まっており、すでに現役を退いているようだった。
その先は、左右にそびえ立つマンションの狭間に伸びる道が続いていた。
実はここも稲荷市場の通路だった部分で、正面に見えるマンションの先、2号線まで続くかなり長い市場だった。
アーケードが撤去され、
建物が解体され、
整地され、
マンションが建設され ←今ココ
遅きに失したどころの騒ぎではなく、すでに周回遅れぐらいの勢いで「今頃来るとかアホなん?」と言われかねないほどの失態を露呈していたことにようやく気づいたのがこのあたり。
で、ついでなんで在りし日の2号線側の入口も載せておきましょう。
2015年4月の様子。この次、2016年6月のはすでに解体されて更地になっていたのでこの頃に天に召されたのでしょう。
ちなみに筆者が関西にIターンしたのが2016年の5月。仮に来てすぐ見に行ってもなかった可能性が高い。
であればしょうがないや、はははw
稲荷市場はなくなれど、下町風景はそこかしこに残っているのでしばし付近を散策することに。
稲荷市場に並行する路地。なんとも香ばしい。
更地より稲荷市場の裏側を眺める。
建設中のマンションとのコントラストが強烈すぎて頭がクラクラする…。
こうして見ると神戸も古い街だなぁと再認識させられる。
家々が密集。だてに150万人も住んでないなと。
なんせ土地が足りなくなって山を削ってニュータウンを造り、その土砂で出来たのがポーアイや六甲アイランドだからね。
神戸ってそう考えたら結構すごいまちづくりをしてきてるわけで。
はた、と足が止まった。
またずいぶんなと古そうなアパートだ。
一休荘。
ちょっと覗いてみたけど、なかなかに昭和な塩梅で大変よろしゅうございました。
さてと、帰るか。
[訪問日:2021年9月5日]
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