前回までの水道筋の流れのまま、今回も神戸の市場の話を。
2019年4月に垂水廉売市場や丸五市場あたりを歩いた神戸の市場巡り。
実はあの日、見に行ったらすでに解体されていて天を仰いだ場所があった。
それが山陽電車の「滝の茶屋駅」が最寄りの『滝乃市場』。
ちなみに滝の茶屋は神戸随一とも言われる絶景駅。
ホームからはご覧のように大阪湾が一望できる。
そんな滝の茶屋駅から5分ほど歩くと、『滝乃市場』の跡地にたどり着いた。
住所で言うと垂水区城が山。
2年半ほど前、筆者が天を仰いだ現場がここである。
予定ではこういう景色が見れたはず・・だった。
ざっと調べてみると2018年の後半~2019年初頭あたりで解体されたようだ。
後日、路地歩きの師匠にこの日の出来事を話したところ、予想の斜め上を行く衝撃の回答が返ってきた。
なんと、そこの裏手にもうひとつ別の市場が存在するという。
名を、新滝乃市場と言うそうだ。
前置きが長くて実に恐縮だが、その事実を確認しに来たというのがこの日の主だった目的である。
新滝乃市場
果たして、北側に並行する行き止まりの路地を進むと探しに来た答えがそこにはあった。
完全に住宅街に埋没する格好で、およそ市場っぽくない入口を少し引っ込んだ場所に認めた。
ガラス戸の上部には、紛れもなく「新滝乃市場」と書かれていた。
どうやらここで間違いないようだ。
入ったら怒られそうな予感がぷんぷんする入口をそっと引いて、意を決して一歩を踏み出す。
180度のパノラマで広がるシャッター。思わず絶句した。
なぜ蛍光灯がついているのかまったくわけがわからないほど、その商店街は完全に終わっていた。
それはもう俗に言う「昇天街」だった。
裏手にちょっとした広場があり、壁に描かれたトトロが憩いの場然とした雰囲気を醸し出していた。
こんなバラックを眺めながらのランチタイムはさぞかし最高だろう。
話を中に戻そう。
突き当たりを左手に折れると、なんと営業している店が存在した。
完全に虚を突かれた格好だった。
洋品店、そして奥では豆腐屋さんが営業していた。
しかも、こちらの存在に気づいた豆腐屋のお母さんが気を利かせてくれたのか照明を点けてくれた。
あるいは買い物客と思われたからかもしれないが、普通の買い物客はこんなところで写真撮るなんて不審な行動はとらないだろう。
正面に見えるのが東側の入口となるが、在りし日はあそこで滝乃市場と繋がっていたそうだ。
ちなみに、滝乃市場の跡地で見かけた肉屋(西村ミートショップ)は元々新滝乃市場にあったようでこの写真の奥、右手がそれである。
なるほど。肉屋が妙に真新しかったのと新滝乃市場を覆い隠すような形になっていたのでそれで当時気づかなかったのか。
来るのがあと半年ぐらい早ければもしかしたら最期の姿を拝めたかもしれない。
そういう市場は枚挙に暇がない。
なお、建て替えなのか撤去なのかは判然としないが、昨年新滝乃市場の屋根がなくなったという情報を見かけた。
やはりレトロは急ぐに限る。
[訪問日:2021年12月11日]
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