かねがね、噂には聞いていた。奈良市最古の商店街、「椿井市場」がかなりキていると。
元林院の散策を終えたあと、念願の場所を訪れるため、椿井町へと向かった。
椿井町に到着すると、墨の老舗である古梅園の建物がひときわ目についた。奈良と言えば墨づくりが伝統なのだ。
その古梅園の南に隣接するのがお目当ての椿井市場(つばいいちば)である。買い物客ではないので、正面切って入りづらいと感じ裏側へ回ることにした。
通りがかった旅館椿荘が、また何とも趣のある佇まいでついつい嬉しくなる。
西側入口の前に立つと、あまりに正面(東側)とのギャップがすごすぎてがく然とした。どう頑張っても戦後ドサクサ系バラック商店街のなれの果てにしか見えない。
中はもっとすごかった
意を決して中へ足を踏み入れる。
うわwちょwwこれはヤバいww
この椿井市場、どうやら開業が明治時代だと言う。市内初の公設市場としてオープンし、100年以上の歴史を紡いでいる計算になる。
さすがに今見てる景色は明治時代のものではないだろうが、大戦前後のものであるのは間違いない気がする。
奈良は空襲を免れてるので、東京みたいに建物を「戦前」「戦後」で切り分ける必要がない。
商店街の両脇には、これまたバラックが当たり前のように立っている。
こんなに完成度の高いバラックはそうお目にかかれるものではない。ここまで来ると、芸術的であるとさえ思う。
さすがは遷都1300年を迎えた古都である。なんと素敵なバラック建築。
商店街そのものも負けてない。昭和20年代から時が止まったような、まるで使い込まれたボロ雑巾のような光景が畳みかけるように目に飛び込んでくる。
結論から言うと、レトロながらやや新し目に見えた東側(正面)は、火災で一度建て直しているそうである。西側は見ての通り、昔のまま。
結果的に、反対から入ったのは間違ってなかったと言える。
ここまで寂れ方が洗練しているとは、真面目な話予想をはるかに超えていた。
レトロ愛好家の間では有名な場所と言うのも普通に納得できる。
ほぼ中央に、稲荷神社と公衆トイレがあった。きっと商売繁盛のために祀られたのであろう。
一体何十年経ってるのか見当もつかないような手書きの看板がそこらじゅうに残っている。
思わず鳥肌が立ちそうになった。人為的ではなく、自然にこれが出来上がったことを思うとどこか神秘的でさえある。
間もなく現役の東側に差しかかる。魚屋、肉屋、中華料理屋あたりが今でも営業している。
その中華料理屋の前に差しかかった、まさにそのときだった。
有線と思しき音楽が、ふと店内から流れてきた。
イチニサン~3ツ数えてイチニサン~♪
「微笑がえし」・・だ・・・と!?
説明しよう。「微笑がえし」とは、キャンディーズ最大のヒット曲で、筆者が神曲と崇める名曲中の名曲である。
それが、さもナチュラルに店内に流れていたのだ。
つくられた空間ではない。空気も建物も、そして流れる音楽も、ここではすべてが昭和のままだった。
この商店街、紛れもなく本物だ。
椿井市場。そこは異空間でも昭和の聖痕でも何でもなかった。今でも昭和が息づく、本物の商店街だった。
明治、大正、昭和、平成。そして、令和。
すべての時代を見てきた歴史の生き証人。
鹿と戯れるのもいいけど、奈良へ来たら是非とも椿井市場を見てほしいと思う。
[訪問日:2016年8月12日]
コメント
今でも、時々車でキャンデーズ聴いてます。
「微笑みがえし」「やさしい悪魔」とか名曲多いですね。
今の季節は「春一番」でしょうな。
今は「春一番」ですね~
昔はホント名曲多いと思いますよ。最近のアイドルは焼き増ししたような商業主義的な楽曲ばかりで全然興味わかないですね。