兵庫県南部のほぼ中央に位置する加古川市。
同市になかなかそそられる市場があるという情報を入手したので行ってみることにした。
場所はJR加古川線の神野駅からほど近い住宅街。
名を「神野市場（かんのいちば）」と言うそうだ。
航空写真で真上から見てみると、アルファベットの「P」のような形をしている。
市場としてはちょっと不思議な形状だ。
東を除く3方向に駐車場があるように見えるので、南側にクルマを停めさせてもらった。
現地に着いた。
・・想像以上だった。
こんな上玉は久しぶりではなかろうか。
ポキポキポキ…
指が鳴るぜ。
錆びた鉄骨。
剥がれ落ちた外壁。
そして、張り巡らされた崩落防止のネット。
これぞ完全無欠の昭和遺産。
はるばるやって来たことが報われた瞬間だった。
神野駅周辺は今からおよそ50年前に開発されたニュータウンで、神野市場も時を同じくして開業。
いわゆる住宅街に突如現れる系の市場は、こういう生い立ちのものが多い。
で。
この日、朝から市場巡りをしてて西へ西へと移動して来たが、お昼はここで食べようとはじめから決めていた。
神野市場には、唯一営業している『千成亭』という大衆食堂があるのだ。
加古川には「かつめし」なる有名なご当地グルメがあって、この千成亭は公式マップにもちゃんと載っている公認店。
かつめしは学生時代に旅行で加古川に来たときに一度食べたことがあり、それ以来なのもあってすごく楽しみにしていた。
お、ここだな？
えっと。店は市場の中かな。
このディスプレイいいなぁ。
ガチャガチャ・・
あれ。ドア閉まっとる。
中を覗いてみる。
いや、違うな。
この中じゃない気がする。
ふと横を見ると貼り紙が。
勝手ながら
しばらく
休業致します。千成亭
( ﾟдﾟ) ・・・
(つд⊂)ｺﾞｼｺﾞｼ
(；ﾟдﾟ) ・・・
(つд⊂)ｺﾞｼｺﾞｼｺﾞｼ
, .
（；ﾟ Дﾟ） …！？
ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ …( ⊃д⊂)ｺﾞｼｺﾞｼ …(*ﾟдﾟ)ｴｯ？！
うそん・・。
今日一番の楽しみが・・
たった今、潰えたorz
自分の運のなさを呪いつつも、嘆いたところでかつめしにありつけるわけでもない。
切り替えて、任務を遂行することにしよう。
神野市場の中へ
少しく思案し、かくなる上はと北側に回ってみた。
壮絶っぷりは南側といい勝負だった。
崩落もだいぶ進行している。
あと2～3発台風の直撃をくらったらたぶんThe Endだろう。
扉に手をかけた。
よかった。こちらは開いていた。
外観の時点でただならぬオーラを発していたが、相当難易度が高い市場であることをこの瞬間悟った。
もう何年時が止まっているのだろうか。
天井はめくれ上がり、照明が灯る日がやってくることも二度となさそうだ。
まるですすけたモノクロの世界のようだった。
陽光に照らされ、白日の下に晒された神野市場を見た。
これをどう形容すればいいのだろうか。
視界が捉えたのは“限界”という概念を超越した何モノかだった。
光が届かないエリアは底なしの闇に支配され、そこに人間が存在することすら拒むかのような怖さを感じさせた。
ここはビギナーが来ていい場所ではないのだ。
この日ほど、今日まで積み上げてきた自分の経験値が頼もしく思えた日はなかった。
間断なく聴こえる水の流れるような音が不気味さを倍増させ、長居すると本気でメンタルがやられそうな気がしてきた。
潮時だな。撤退しよう。
気になる階段を見つけた
改めて外観を観察すると、二階へ続く気になる階段を見つけたので上がってみた。
二階は居住スペースだったのだろう。
生活感を感じさせる気配とその名残。
ここもまた時が止まったままだった。
その後、千成亭さんは元気に営業を再開したようだ。
次回、加古川方面へ足を伸ばすことがあれば。
次こそかつめしのリベンジを果たしてこようと思っている。
[訪問日：2021年12月11日]
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