360度を海に囲まれた離島は、言ってしまえばひとつの国のようなものだと思う。
言葉こそ共通とは言え、そこに根付く文化や価値観、風俗は千差万別である。
だからこそ島旅は面白いのであろう。
そんな“離島沼”への入門に相応しい島が、兵庫県の姫路沖にある。
兵庫に離島が!?
兵庫県で島と言えば、ほとんどの人が玉ねぎ島、こと「淡路島」を連想するだろう。
ポートアイランドや六甲アイランドと真顔で答えるアレな人は一旦置いといて、まぁそれが普通の感覚ではある。
そんな普通の人に是非知ってほしいのが姫路沖に浮かぶ家島諸島。
大小40余りの島々で構成された島嶼群で、その中心にあるのが「家島(本島)」である。
家島は姫路港から約30分。新快速で大阪から京都に向かうぐらいの時間で着ける非常に手軽な島である。
家島諸島には有人離島が4つある。
人口は4島で5,000人あまり。と言っても家島と坊勢島でほぼ二分されており、残りの男鹿島と西島を足しても全体の1%にも満たない。
今回は家島と坊勢島に足を伸ばすことにし、家島で一泊するプランを立てた。
人口も多いし、定期船も概ね1時間に1本の間隔で運航している。
30分かかるとは言え、乗客も多く上陸するまであまり離島感は感じられなかった。
家島は北東部が湾になっており、「真浦港」と「宮港」の2つの港がある。
集落は港を中心に海岸線に沿って形成されており、真浦のほうが島の中心と言った感じでやや栄えている。
旅館や民宿はいずれにもあるが、筆者は真浦に宿を取った。
真浦を散策
チェックインを済ませ、早速島内の観光にくり出した。
手始めに向かったのが城山公園。そこまで高さはないが、文字通りかつて城が築かれた山だそうだ。
ここから家島の中心部が一望できる。
城山公園から下りると、「どんがめっさん」と呼ばれる亀の形をした石がある。
その昔、主人の帰りを待つ亀が長い間待ち続け、とうとう石になってしまったという伝説にちなむそうでなるほど確かに亀の形をしている。
「万年」と言われる亀が石になるって相当長い時間なのでは!?
と思ったそこのあなたに耳寄りな情報を教えよう。
亀の寿命は30年~。品種によっては100年ぐらい生きる個体もいるが、
神龍にでも頼まない限り、どう間違っても1万年なんて生きない。
のである。なぜか規格外に長寿だと思われているフシがあるが、亀からしたら完全に風評被害のレベルである。
さて、定番スポットの上記2つを見たら、路地裏散策へと洒落込もう。
真浦の集落は、港から山のほうへまっすぐ伸びる道沿いに形成されている。
特にあてもないのでだらだらと歩くことにしよう。
筆者が離島沼にはまるきっかけになったのは、元々ごちゃごちゃと入り組んだ雑然とした路地が好きだったのがその理由である。
その多くが漁村である離島には、港に近いわずかな平地に力技で作ったような集落が点在し、そういう集落はご多分に漏れず古い木造家屋と細い路地裏が入り組んだカオスな町並みを残している。
一例としてはこんな感じである。
もちろん家島にもそういう風景を期待して渡ったのではあるが、予想外に新しい家が多くて少しがっかりした。
しかしながら、狭い路地裏はそこかしこにあり「あぁ漁村ってやっぱこうだよな」と思わせてくれるには十分だった。
そして、何と言ってもそこに“傾斜”と言うオプションが付くと魅力がぐっと増すのである。
行ってみてわかった。家島の真髄はこういう景色である。
狭い階段を挟んで向き合うように立ち並ぶ古い家屋。
石垣やトタンが強烈に郷愁を誘い、前時代へのオマージュを捧げたくなる光景だ。
あ~首かいぃ~
そうそう、離島と言えば猫がつきものだが家島は思ったほど多くなかった。
まぁ、たまたま出会わなかっただけの可能性も否定はできないが。
家々が路地に迫りくるような圧迫感。
この先、この島はどんな景色を旅人に見せてくれるのだろうか。
まだまだ探検は続く。
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