足守藩、木下家の陣屋町から北へ1km。「大井」と言う地区に古い商家の町並みがあると言うことでちょっとだけ足を伸ばして寄ってみた。
国道429号線から分岐する形で北へ伸びる旧街道。
商家の町並みはこの街道沿いに展開している。
周辺は、足守川によって形成されたのどかな田園地帯が広がっている。
しかしながら、国道沿いからはまったく想像もできないような立派な町家建築が点在している。
“大井村役場”と刻まれた石柱が立っていた。
かつてこの場所に村役場があった名残であろう。
足守からわずか1kmという距離でありながら、この集落が発展したのは物資の集散地であったことと市場が開催され人々で賑わったことがその理由だそうだ。
ちょうど集落内で旧街道は足守川を渡るが、そのあたりがちょうど支流との合流地点になっている。
なるほど、陸路と水路、双方で要衝たり得る立地なのが発展の理由だったであろうことは想像に難くない。
建物の雰囲気は足守によく似ている。
すなわち、漆喰塗籠&海鼠壁の特徴を有している。
そして、中二階部分に模様を配して各家で個性を際立たせている。
3階建てに見える重厚な蔵造り。
通りでも一際目立っていた。
脇道の商店。
500mほど進んだところで足守川を渡る。
橋の向こう側もまた、栄えた時代の面影を偲ばせる町並みが続いていた。
そう言えば、大井の町家も足守同様平入り厨子二階を基本としていた。
唯一違ったのは蔵ぐらいだった。
国道の分岐点から総延長700mほどで町並みは途切れた。
町家の残存率はそこまででもなかったが、重厚なものがぽつぽつと点在する街道筋はなかなか歩き甲斐があった。
板野酒造本店
足守川に架かる橋の袂に「板野酒造本店」と言う小さな造り酒屋がある。
創業は明治3年。
足守にあった「谷口屋」という酒蔵の当主の次男が分家し、「三谷屋」という屋号で創業したのが始まりだそうだ。
事務所の裏手、脇道の奥には巨大な蔵が見える。
創業150年。
重ねた歳月を土壁が物語っていた。
事務所の横には直売所があったが、朝が早かったせいか残念ながら閉まっていた。
足守から近かっただけでおまけ程度のつもりだったが、大井の集落は予想以上に濃密な町並みだった。
[訪問日:2021年5月1日]
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