宿場風情があり余る。中山道の間の宿「茂田井」を歩こう

長野県
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小諸からクルマを走らせることおよそ30分。
次に向かったのは、この旅で最後のまち歩きとなる中山道の「茂田井宿(もたいしゅく)」である。

茂田井があるのは佐久市の最果て、ほぼ立科町との境目あたり。
ここは正式な宿場ではなく、望月宿と芦田宿の間にあるいわゆる「間の宿」だった。

茂田井宿は端から端まで約1.7km。
県道の北側をほぼ並行する、宿場としては非常に模範的な地理的条件を有している。

これは言うに及ばず、宿場内の道幅が狭かったため迂回させるように県道を敷設した名残である。
おかげで昔の佇まいがそのまま残ったというわけだ。

中山道は平時から通行量が多い街道で、茂田井は望月宿と芦田宿で対応できないときの休憩処としての役割を担っていたと言う。
宿場間の距離が遠かった事情もあり、このように間の宿が点在するのは中山道の特徴である。

江戸時代から道幅が変わらないどころか、建物もそれなりによく残っている。
言ってしまえばほとんど江戸時代と同じ景色を眺めているようなものだろう。

街道沿いには白壁土蔵がよく残っていた。
中には土壁が剥き出しになったものも見られた。

蔵をリノベーションしたカフェ。

元禄2(1689)年創業、とんでもなく長い歴史を誇る大澤酒造。
「民俗資料館」と「山林美術館」を併設している。

旧街道はその先でゆるくカーブしながら下り坂へと変化する。

ここの風情が実に絵になる。

白壁の土蔵や土塀もいいが、茂田井は何と言っても道端の用水である。
これも江戸時代から残る代物で、宿場風情に華を添えている。

明治~大正の歌人、若山牧水は旅と酒をこよなく愛し、茂田井にもたびたび足を運んでいたそうだ。
それを示すのが右端に見える「若山牧水歌碑」である。

ひとの世にたのしみ多し然れども 酒なしにしてなにの楽しみ

よき酒とひとのいふなる御園竹 われもけふ飲みつよしと思へり

しらたまの歯にしみとほる秋の夜の 酒はしづかに飲むべかりけり

 

いやー、牧水さん。あんたどんだけ酒好きなんw

 

さらさらと水が流れる茂田井は、実は良質な米と水に恵まれた酒造りに適した土地。
先の大澤酒造さんと、もう一軒造り酒屋が残っている。

それがこちらの武重本家酒造。
明治元(1868)年創業と、200年近くも後塵を拝しているが目下二軒とも県下を代表する酒蔵である。

ちなみにこの日はお休みで楽しみにしてた地酒は買えなかったというオチ付き。。

武重本家酒造の門から牧水の歌碑を眺めるこのアングルが、個人的に茂田井のベストスポットだった。

茂田井間の宿。
江戸時代をそのまま凝縮したような、類まれな風情を醸す宿場がそこにはあった。

中山道六十九次もまだ10ぐらいしか歩いてないので、こちらも折を見て増やしていきたいと思う。

今回の長野編はこれにて終了。

[訪問日:2021年7月25日]


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