日本のウユニ塩湖と呼ばれる香川県の「父母ヶ浜(ちちぶがはま)」。
条件が揃えば、まるで鏡で写したかのようなリフレクション写真が撮れるとSNSで人気の観光スポットである。
この父母ヶ浜があるのが香川県三豊市の仁尾町。
平成の大合併まで仁尾町だったこの町に、時が止まったような昔懐かしい町並みが残っていることをご存知だろうか。
仁尾のまちを歩く
戦国時代に仁尾城の城下町として発展したこのまちは、江戸時代に入り製塩業と海運業で大いに栄えた。
その時代の名残は今なお残り、趣のある細い路地に沿って古い家屋が点在している。
場所は父母ヶ浜からだいたい北へ2km弱ぐらいだろうか。
実際のところ、歩いても全然行ける距離である。
とは言え、「映え~♪」とか言いながらSNSのためだけに父母ヶ浜にやって来る層にはかすりもしなさそうなのが辛いところだが、筆者としては是非まちにも足を踏み入れてほしいと願う次第である。
古い町家がそこかしこに残る。
「永徳屋薬房」と読める、元薬局だろう。
一棟貸しの宿「仁尾縁 多喜屋」。
だったんだけど、昨年NIPPONIAとしてリニューアルオープンしたようだ。
フォントが渋すぎる。
ウユニ塩湖よりこの路地裏の風情のほうが素敵だと思いません?笑
県道21号線沿いの廃屋
まなべ人形店
仁尾は寺町とも呼ばれるほどお寺が多く、かつては町内に25もの寺院があったそうだ。
この普門院の前に「辻の札場」という高札場があり、江戸時代にはお触れなどを掲示していた。
一部補修されているものの、原形をよくとどめた全国的にも貴重なものであると案内板には書かれていた。
普門院がある南北の通りが仁尾のメインストリートで、これを「なかんちょ(中の丁)」と呼ぶ。
そのなかんちょ沿いに、「仁尾酢」と呼ばれる米酢の醸造元、中橋造酢の蔵がででーんと立っている。
1741(寛保元年)年創業、仁尾を代表する老舗である。
北側の路地から。
なかんちょから再び路地裏に分け入る。
こういう、車が通れるか微妙な幅の路地を彷徨うのがまち歩きの醍醐味である。
いや、むしろ真髄と言ってもいいかもしれない。
この路地の先にまさか現役の銭湯があるとは・・なんと奥深いまちだろうか。
三豊市唯一の銭湯「大井温泉」である。
さらに奥へ奥へと迷い込んで行く。
辿って来た道などはとうに分からなくなっていた。
軒先の錆びついた看板が昭和への郷愁を誘う。
ここで写真を撮った人たちの顔が、剥がれかけた文字の奥にどこか重なって見えた。
そして現れたのが仁尾の名物店、「伊藤製パン所」である。
おばあちゃんが一人で切り盛りする町内最後のパン屋で、昔懐かしい雰囲気に足を運ぶ常連さんも多いと言う。
仁尾の路地裏はどこまでも味わい深く、旅人に優しかった。
これほど鮮烈な郷愁を感じる場所もそう多くはないと思う。
昭和の街を駆けたもう動かない二輪車が、終わりのない余生に身を預けながら静かに時を刻んでいた。
名残り惜しくも、ここらで仁尾の散策を切り上げることにした。
[訪問日:2022年5月3日]

























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