佐渡島で築120年超、元遊郭の転業旅館『金沢屋旅館』に泊まってきた

新潟県
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先日書いた水金遊郭の他に、実は佐渡にはもうひとつ、両津港のそばに両津夷(えびす)遊郭があった。
そこで当時「金澤楼」という屋号だった妓楼が、現在も旅館として営業しているというので満を持して泊まってきました、というのが今回のお話。

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それがこちらの『金沢屋旅館』。1887年(明治20年)に建てられた、軽く築120年オーバーな正真正銘の元遊郭。

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もちろん今回の旅で一番楽しみだったわけなんですが、実は遊郭だったことはたまたま予約を入れた後に気がついた、というなんとも間抜けなオチ。

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場所は、住所で言えば佐渡市両津湊。玄関口の両津港からゆっくり歩いても10分ほどで到着する。佐渡を観光するならこれ以上ない素晴らしいロケーション。

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それではお邪魔します

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玄関をくぐると、重厚すぎる空間にまるで過去にワープしたかのような錯覚に陥る。流麗な字体で刻まれた「金澤楼」の文字が、ここが元妓楼であったことを誇示するかのように訪れ人を厳かに迎え入れてくれる。

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ちなみに夜にはご覧のようにライティングされてさらに重厚感に磨きがかかります。
着いたのが夜だったらこの時点で圧倒されて死ぬほど入りづらかったんじゃないかな・・(笑)

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一階は風呂や調理室、食事処などがあり、間取り図によれば奥に八畳の客間があるようだが、筆者は二階の六畳間に通された。

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急な階段を一段一段踏みしめるように上る。
今から100年前、遊女に手を引かれながら遊客たちもこの階段を上ったんだろうか・・って考えると、万感の思いが胸にこみ上げてくる。

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はやる気持ちを抑えながら、一度振り返って階下を確認。いや、特に意味はないんですけどね(笑)

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通路に向かうところで、お高そうな調度品がガラスケースに展示されていた。この手のものの価値がさっぱりわからないのがいかんせん残念なところ。

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二階の通路。
字面からはあまり伝わってこないけど、このときはそれはもう振り切れそうなほどテンションMAXでした。
なんせ初めて本物の遊郭に登楼したんですから。

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そしてこちらが泊まらせてもらった五番のお部屋。
この札もドアもそして部屋も、すべて当時のまま。

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隣の部屋との仕切りには、金の襖絵。もうひとりで大盛り上がり。

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驚いたことに、縁側(内縁)には洗面台が設置されていた。風呂、洗面は余裕で共同だろうと思っていたのでこれにはさすがに虚をつかれた。

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一階のトイレ。どうです、この何度も行きたくなるような艶っぽさ。
ちなみに、お風呂は外で食事したついでに温泉に立ち寄ったのでここでは入らず。中を見たかったけどそういやすっかり忘れてた。

興奮してなかなか寝つけないかと思いきや、旅の疲れには勝てず呆気なく寝落ちしてしまい、目が覚めたらすでに朝。
遊女と同衾する気まんまんだったんですが、着衣の乱れもなかったのでどうやら何事もなかったようです(笑)

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食事前、元遊郭だったという界隈を散策。

戻ってくると宿のご主人からかっぱえびせんの小袋を手渡され、いやいやずいぶん簡素な朝食ですねとドキドキしてたらさすがにそれは早とちり(笑)
聞けば旅館裏手の加茂湖にウミネコが生息しており、えびせんで餌付け出来るという。
半信半疑でタイミングよく空に放り投げると、空中でスーパーキャッチするもんだからもう楽しくなっちゃってね。しばしウミネコと全力で戯れました。

旅人にこんな粋な計らいをしてくれる旅館もそうそうないんじゃないかと。

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程よく体を動かしたところで美味しい朝食を頂いて、名残惜しくもチェックアウトの時間が近づいてきたので最後に女将さんから色々話を聞かせてもらった。

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部屋の窓から前栽(中庭)を見下ろす。

  • 金沢屋旅館は、築120年
  • 夷遊郭は昔は20軒くらいあったけど、残ってる建物はもうない
  • 昔は金山でもっと賑やかだった
  • (旅館のことか遊郭のことかちょっと失念)市史にも載っている
  • シンメイチョウにも遊郭があった。でも今はもうない
  • (一階に飾ってある)伊万里焼は結婚式なんかで使っていた

以上の話を伺うことができた。

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これがその伊万里焼。昔は結婚式場なんてなかったわけだから、ハレの日には広さのある遊郭が使われていたのだろうと思う。
シンメイチョウが気になったので調べてみたところ、現在佐渡で最も栄えているフェリーターミナルの北側あたりが昔は「両津夷神明町」と言ったそうでおそらくこのことかと。現在この地名はなさそうな感じであった。

もう少しお話を伺いたかったんですがね、フェリーの時間が迫っていたのでそれは叶わず。結局シンメイチョウを見る時間もなく。

宿の女将さん、ご主人、本当に気さくな方で、外出して遅く戻ったにも関わらずバイクを屋内に停めさせてくれたり、貴重なお話を聞かせてもらったり、大変お世話になりました。

元遊郭の雰囲気を味わいたい方、明治時代の古い建物に興味のある方、佐渡を訪れた際は是非「金沢屋旅館」にお立ち寄りください。

[訪問日:2014年9月22日]

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