珍しい「突き上げ屋根」が残る塩山下小田原上条集落を歩こう

山梨県
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2015年7月、「山村・養蚕集落」の種別で山梨県では二番目の選定となった重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)が甲州市塩山下小田原にある上条集落。

ココは以前は塩山市だったが、市町村合併によって2005年に甲州市塩山となった。

上条集落は甲府盆地を見下ろす傾斜地に位置する集落だが、まずは行き方を確認しよう。

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上条集落のアクセス

電車の方はJR塩山駅からバスと徒歩。最寄りのバス停から20分は歩くので歩きやすい格好で行ったほうがよいと思う。

車の方は集落内にある福蔵院の東側に観光用の駐車場があるのでコチラに停めよう。

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上条集落の歩き方

見学ルートが整備されているのでそれに沿って歩くのがなんだかんだで楽だと思う。

福蔵院

車で来る人のほうが多いのか、福蔵院を起点にすることを想定しているような感じだったのでひとまずそのつもりで案内しよう。

というわけでここからスタート。

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金井加里(かないかり)神社

“いかり”は甲州弁で“埋まる”を意味するそうで、金が埋まってそうな名前の金井加里神社。

本殿は江戸初期の神社本殿建築。かなり貴重なもののようだ。

境内からは素晴らしい絶景が広がる。
甲府盆地一望の名は伊達ではない。

金井加里神社から古道を北上するとこんな風景が目の前に現れる。
“昔とほぼ変わらない景観”とのことで上条集落のパンフレットにも紹介されている。

その先で何やら茅葺屋根の民家が見えてくる。

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観音堂

江戸時代、18世紀末頃に建てられたと言われている観音堂。
改修工事によって平成21年にトタン屋根から茅葺き屋根に生まれ変わったそうだ。

内部は集落で声をかければ見学可能。
桜の木一本で彫られた百観音像は見ごたえあり。

江戸時代から御堂と集会所を兼ねた集落の拠点で、事実、上条集落はこの観音堂を馬蹄形に囲むように、ひな壇状に家々が形成されている。

※先月発売になった拙著『全国重伝建紀行』にそれがよくわかる写真を掲載しているのですが、特別に許可を頂いて火の見櫓の上から撮影したものなので申し訳ありませんがブログでの掲載は控えさせて頂きます。。

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もしもしの家

上条集落を代表する建物がこちらのもしもしの家

江戸末期の古民家で、NPO法人の山梨家並保存会が宿泊施設として蘇らせた建物。
宿泊のみならず、デイユースでの貸出も行っているそう。

ちなみにこのちょっと変わった名前は、昔はこの家にだけ電話があって集落内の人々が電話を借りに来ていたのが由来なんだとか。面白いですね。

さて、上条集落を語る上で絶対に外せないのがこの特殊な形状をした屋根。これは「突き上げ屋根」と言って養蚕が盛んだった時代の名残。

一般的に養蚕家屋と言えば換気用の越屋根が乗っかることが多いが、上条集落では屋根を突き上げ、通風と採光を兼ねた開口部を南向きに配置している。

この地域はあまり強い風が吹かないそうで、それゆえこのような屋根の形状が可能であったようだ。
気候に適応した、まさに先人たちの素晴らしい知恵と言える。

この建物は正式には茅葺切妻造主屋と呼ばれ、山梨の甲府盆地東部には比較的よく残っているそうだ。
しかしながら、ココのように一つの集落内でまとまって残るケースは稀だそうで、それゆえ希少性の高い町並みと言えるのではないだろうか。

上条集落遠景

筆者は上条集落に冬と秋に足を運んだが、秋は山々が色づいて本当に美しかった。
春も山梨らしい桃源郷が望めるとのことなので、今度は是非春に訪れてみたい。

出版の撮影で再訪したとき、ご厚意に預かり「もしもしの家」の内部を見せて頂いたが、ここで宿泊できたらさぞ幸福な時間を過ごせるだろうな、と思えるほど素晴らしいものだった。

上条集落は、可能であれば是非とも泊まりで訪れてほしい。

養蚕の隆盛を今に伝える上条集落。
四季折々の風景が美しい山村集落がそこにはある。

[訪問日:2021年12月29日]


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