前回井川町辻を歩いたので、今回はその流れで勇楼旅館に泊まった話を。
泊まりに行ったのは昨年7月。
四国方面へ野暮用があったので、この日は高知をうろうろしてから徳島入りをした。
もう一度外観をおさらい。
勇楼旅館は正面の本館と右側の新館から構成されており、本館は明治30(1897)年に刻み煙草の商家として建てられたものである。
新館のほうは昭和13(1938)年の建物で、元々そこにあった小さな工場を解体して旅館として新築された。
ちなみにこの一風変わった屋号は、初代当主の吉岡利吉という人物が力士で、四股名が「浜勇(はまいさみ)」と言ったことから「勇楼(いさみろう)」と名付けられたそうだ。
旅館を始めたのは二代目で、前回の記事で紹介した旧中車旅館の隣で料理業を営んでいたが別館として昭和11年にここに移り、昭和13年に旅館業を始めたとのことである。
そんなわけで、まとめると2026年時点で創業88年、本館が129年、新館が88年ということになろうか。
旅館入口は本館の向かって左側になる。
正面にはなまこ壁と虫籠窓。旅館建築ではあまり見ないが元商家だったことを知ると合点がゆく。
それではお邪魔します
ざっと解説が終わったところでここから先は宿泊記を。
女将さんに迎えられ、無事チェックインと相成った。
泊まったのは新館1階の一番手前の部屋。
本館2階にも客室があるものの、特に何も言わなければ基本は新館になる感じのようだ。
とにかく暑い時期だったので、旅装を解いて冷たい麦茶で一息ついた。
壁には瓢箪のくり抜き窓。
タオルが旅館オリジナルだと嬉しい。
床脇には違い棚。床の間もずいぶんと立派だ。
泊まった部屋は第一號。
号が旧字体なのにぐっと来る。
食事までまだ時間があったのでしばし館内を散策。
この日は筆者の他にもう一人ソロのお客さんがいたようだった。
別の部屋。
窓の意匠は月だろうか。こちらも良い。
この特徴的な石造りの洗面台は人研ぎ(人造石研ぎ出し)という、職人さんの手仕事で生まれた代物だそう。
昭和の学校とか公共施設に残っている貴重なものだそうだ。
(と、過去にお客さんから教わったと思われる案内板が掲示してあった)
夕食~朝食
夕食は部屋出しだった。
結構なボリュームだったが、なんとか完食した。
地酒は辻の酒蔵、芳水酒造さんの生酒を。
余談だが、筆者はどっちかと言うと痩せ型に分類されるので生きるために必要なカロリー量は人並み以下なのだが、幼少期より食事を残さないようにしつけられたためか出されたものは全部食べるという鉄の掟が細胞レベルで体に染み付いてしまっている。
結果として、旅館に泊まると食事はすなわちフードファイトと化し、帰宅後に体重計に乗ると阿鼻叫喚の大惨事が待っているわけである。
食事を済ませたら風呂に入り、あとは特にやることもないのでだらだらと過ごして就寝。
翌朝、朝食は部屋ではなく本館一階にある別室で。
この日は筆者が路地裏の師と仰ぐ大先輩とまち歩きの予定だったのでご飯はしっかりと頂いた。
女将さんから館内を案内してもらった
勇楼旅館はSNS界隈で非常に有名かつ人気な旅館なのだが、なんと女将さんはX(旧Twitter)をされているようで過去に泊まりに来た人のことを色々と話してくださった。
筆者が何者であるかも最初に告げていたので話がスムーズに進み、朝食後に旅館のことを教えて頂き、さらに館内の案内までして頂けることに。
まずは旅館のことから。
ちなみに冒頭に書いた歴史やらはこの冊子に書かれていた内容で、これは何かと言うと・・
おそらく行政が発行したと思われる、辻の町並みのあれこれをまとめた冊子。
庭には立派なカイヅカイブキの木がある。
この日も朝から良い天気だった。
というわけで女将さんに館内を案内してもらうことに。
まずはまだ見てなかった本館二階へ。
階段を上がった先が小部屋になっているという一風変わった造りをしている。
本館二階の客室。
新館と比べて重厚な雰囲気が漂っている。
窓から庭と新館を眺める。
カイヅカイブキは3本並んで立っていた。
そして屋根に目を凝らすと、そこには鯉の滝登りっぽい意匠が描かれていて、シャチホコっぽい何かが見える。
旅館に泊まるときは広角寄りのレンズを使うのでこれが精一杯…。
奥の部屋がまた素晴らしくて、何でしょうこの素敵な空間は。。
逆の意味で落ち着いて眠れなさそうな気がする。
床の間に近づくと、そこには職人さんの魂が感じられる造形の数々。
さすがは刻み煙草で財を成した豪商の屋敷だ。
地袋の側面がもうすごすぎて何がなんだか・・
正面から。思わず正座してひれ伏したくなるぐらいすごい。
こんなところに松が・・
もうわけがわからないよ・・
続いては別館二階へ。
宴会や結婚式で使われていたという大広間。
照明の装飾に目が釘付け。
この扇形を重ねたような図形の面積を求める問題、中学生ぐらいに数学でやってたよなぁ(笑)
ナショナルのエアコンが渋すぎる。
これいつのだろう。
庭と本館がよく見える。
余談だが、旅館の前の駐車場の場所にはかつて映画館があったそうだ。
そして駐車場の北側、今現在旅館入口へのアプローチとなっている場所には呉服店があったことも教えてくれた。
そんなところで、名残り惜しくも出発の時間となってしまったので女将さんに丁重にお礼を告げて辻のまちを後にした。
実はこのとき、拙著『全国重伝建紀行』をご厚意で一冊購入頂くという嬉しい出来事があり、別の部屋に泊まっていたお客さんにも「紹介しといたよ~」なんて言ってくださったり・・。
女将さん、その節は大変ありがとうございました。
また泊まりに行きます!
[宿泊日:2025年7月]








































コメント