かつて石炭の輸出港として、その後は貿易港として。日本の近代化、国際化に多大な貢献を果たした。
九州の玄関口、また、日本の玄関口として多くの人が行き交った、歴史ある港町。
門司港とはそんな街である。
まだ「町並み」や「町の歴史」にさほど興味がなかった頃に一度だけ、ただの観光で門司港レトロ地区を訪れたことがある。(ブログ初期の、今読み返すと恥ずかしいぐらいひどい文章だけど一応リンクも貼っておく)
門司は古いまちである。昔ながらの市場や商店街が実はまだ結構あって、レトロ地区とは一線を画した雰囲気を今なおとどめている。
元闇市の中央市場
大正9年に開設した「老松町公設市場」を前身とした中央市場。戦後は闇市として再興しただけあり、今でも空気感は当時のままである。
最盛期には70ほどの店舗があった市場も、廃業や老朽化でシャッター街となってしまった。
そこまでは地方あるある、どこに行ってもよく聞かれる話である。
ところが、この中央市場では近年空き店舗をリノベーションしたカフェなど、新しい店舗がオープンして少しずつ活気が戻ってきていると言う。
昔はどこに行っても当たり前のように見られた光景。昭和から平成を経て、日本から確かに失われてしまった光景。
ここには、それがまだ息づいている。
もちろん、門司という土地ならではの理由が大きいのだろう。
交通の便が良いこと、レトロ地区と言う安定した集客を見込める観光資源が近くにあること、そして、玄関口として昔から人々の交流が活発だったこと。
よそ者を受け入れる土壌がなければ、まずこういったシナジー効果は期待できない。
つくられたものではない、昔からの佇まいを保った古い市場があって、土着の人とよそから来た若い人が一緒にこれからのことを考え、力を合わせてまちの魅力をつくっていく。
人の流出と高齢化で苦境にあえぐ地方でこういう場所を目の当たりにすると、掛け値なしに応援したくなるし、素直に感動や高揚感を覚える。
いつかは今の生活からセミリタイアし、自分が住みたい場所でやりたいことをしながら、近所の人たちと笑ってのんびり過ごしたい。
そんな暮らしを夢見る筆者にとって、門司港はとても魅力的な場所に映った。
ところどころ、このような標語が掲示されている。どれも読むとほっこりする言葉たちばかり。
全部1袋100円。安い。
歩いたのはちょうど1年ほど前、年末のとある土曜日。
シャッターが閉まってるのは週末、または正月が近いからなのかどうかはちょっと判断がつかなかった。
それでも、こうして年越しの準備のために市場を訪れる人たちを眺めてると、日本にも素敵な場所がたくさんあるし、まだまだ捨てたもんじゃないなと、そんなことを思った。
ちょうど1年後の2020年年明け、中央市場を再訪。
1月2日、三が日だけあって今度は完全にシャッター街だった。(開いていたお店は二軒のみ)
何も変わってない市場に安堵し、なぜか郷里に帰ってきたかのような懐かしさを覚えた。
門司中央市場。そこにはほんまもんの“門司港レトロ”があった。
いつまでも今の姿をとどめてほしいと、静かにそう願った。
[訪問日:2018年12月29日、2020年1月2日]
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