愛媛県西部の西予市には、『卯之町(うのまち)』という古い町並みがある。
昔は宇和町という町だったことで、一般的には宇和町卯之町と呼ばれている。
卯之町は2009年、「在郷町」として重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に選定された。愛媛では内子町に続いて二件目の登録で、2023年12月には宇和島の津島町岩松が増えて三件になった。
卯之町の行き方
JR予讃線の「卯之町駅」から徒歩で約10分とアクセス良好。
車の方は「まちなみ広場駐車場」という無料駐車場あるのでこちらに停めよう。
保存地区内にあるので非常に利便性が高い。
卯之町を歩く
そんなわけで、早速保存地区を歩いて行こうと思う。
範囲は4.9ha。ここは重伝建の中でも小さい部類に入るので歩きやすい。
卯之町は戦国時代には西園寺氏の城下町だったところで、廃城後に在郷町(城みたいに核となる要素を持たないまちのこと)へ。
江戸時代には宇和島城下と大洲城下を結んだ宇和島街道の宿場町となり、宇和島藩唯一の宿場町だったこともあってその後長きに渡って大いに栄えることになった。
今でも幕末から昭和初期あたりに建てられた商家が残っており、白壁、うだつ、出格子などの伝統的な建築様式が見られる美しい町並みが続いている。
概観はざっとそんなところとなるが、中心となるのは旧宇和島街道の「中町」。
この中町のちょうど中ほどに立つこちらのベンガラ色はカフェ&バールの「卯之町バールOTO」。
西予市の元地域おこし協力隊の方がオープンしたお店だそうだ。
見どころはこの鳥の飾り瓦。さらに、鬼瓦の上に鯱鉾が乗っかってるなんとも豪華絢爛な意匠で目を楽しませてくれる。
中町(旧宇和島街道)
こちらが旧宇和島街道の中町。ちなみに、読めた人いないと思うけど読み方は「なかのちょう」。
この通りでいきなり度肝を抜かれるのがこの「松屋旅館」。
江戸期創業で、建物は1804年築と言われている。
外観に衝撃を受けたあと、おおかたの人がこの木札でもう一度衝撃を受けることになる。
そこには松屋を訪れた著名人のリストがずらりと。
犬養毅、後藤新平、尾崎行雄など・・
もうひとつあって、そっちには新渡戸稲造博士の名が。
す、すげぇ・・
ただ、残念なことに今現在、改装のため旅館は休業中だそうな。
オープンしたら泊まりに行こう。
中町。白壁の妻入り商家が立ち並ぶ圧巻の光景。
面白いのが、造り酒屋が立つ対面のほうはすべて平入り。
どういう理由でそうなったのかちょっと気になる。
妻入り商家群のうちの一軒が「文化の里休憩所」。
よくある、観光案内所を兼ねた無料休憩所ですね。
ここに町名の説明なんかも書いてあるので大変勉強になる。
地割りは江戸時代のままのようだ。
保存地区は地図で見ると「田」みたいな形をしてて、この整然とした感じは城下町の名残なんだな、と気づくことになる。
中町の突き当りにある『宇和先哲記念館』
宇和町の先哲(先人や偉人のこと)を紹介する資料館。
卯之町は、西洋医学を日本にもたらしたシーボルトの弟子にあたる二宮敬作が開業医をしていたまちで、楠本イネ(丸山遊郭の遊女「楠本滝」との間に生まれたシーボルトの娘)もここで彼に医学を学んでいた。
先哲記念館ではそのあたりのことが学べる。
緩やかな坂道になっているのは過去にくり返し土石流が発生した名残だそうで、卯之町自体が小さな扇状地の上に立地していることを示している。
築約200年の酒蔵を改装した、ギャラリー喫茶池田屋。
少し下ったところには「二宮敬作住居跡」の石碑と“女医イネの出発点”と書かれた案内板がある。
実はイネは日本人初の女医(産科医)でもあるのだ。
卯之町、なかなかに歴史が深い。
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