石段街で有名な「伊香保温泉」の裏表のギャップが激しすぎてびっくりした

首都圏から適度に近く、石段街の風情も相まって観光客や湯治客で賑わう群馬県の伊香保温泉。
だが、そこには熱海と同じようにかつて歓楽温泉街として浮き名を流した過去があった。

左手奥のほうにいかにも妖しい路地が続いていたので、吸い込まれるようにそちらへ向かう。

赤線だったと思われる路地

そこには赤線時代の残滓と断定して差し支えないスペックを持った建物と風情が待ち受けていた。
この通り・・絶対そうだったろ。

当時の伊香保温泉の描写については、おなじみ昭和30年の『全国女性街ガイド』に聞いてみましょう。

「特飲」は伊香保銀座の石段道をはさんで左右に三ヶ所固まっており、この二年ほどに急激に増え三十五軒、約百名。私娼では名門の方で、古書によれば寛永八年に公許され「餅売湯女」と呼ばれた。遊び五百円、泊り千五百円。

と、どうやら3ヶ所もあったらしい。“左右に”とあるので、前頁の「湯の香通り」もそのうちのひとつだったような気がする。
35軒100名か・・しかしまぁ昔はかなり賑やかだったようである。

この建物とか、明らかに「クロ」だよね。

死ぬほど細い路地へ分け入ると、伊香保の街は凄まじい光景を訪れ人に見せてくれた。
願わくば・・昭和30年代にここへ来たかった。それはけして叶わない、儚い夢である。

それにしても、思う。
今の伊香保は寂れてるとは言え、あの大江戸温泉グループなどの大規模なホテルが石段街を中心に点在し、路地裏や歴史など何も知らない若い女性観光客などが浴衣姿で楽しそうに散策している。

目に見える部分と見えない部分のギャップがこれほどまで深い温泉街というのも珍しい。そして、その溝は埋まるどころか年々深まっていく。哀しいことに。
伊香保の街を歩くと、そうした得も言われぬ悲哀を感じることができる。

気がついたら温泉街東側の車通りに来ていた。バス通りから温泉街に向かってありえない急坂が続いている。

坂の上にはバス乗り場とロープウェイ乗り場がある。言わば「交通の要所」であるにも関わらず、そこには廃業したホテルがでーんと建っていた。思わず閉口してしまう。

少し下ったところにもホテルの廃墟。
「廃墟ストリート」とか「廃墟ロード」とか「廃墟アベニュー」とかもうそんな名前でいいんじゃないかこの通り。

もはや廃墟しかないのか・・と沈みがちに坂を下って行くと、そこにはまばゆいばかりの輝きを放つ劇場、『銀映』の姿があった。

ミニレジャーセンターと書かれた看板が、ここがどういう場所であったかを告げていた。
それにしても「踊れるコーヒースナック」ってどんなんだかまったくイメージできんｗ

どうやらまだここは現役であるようだ。
しかしそこは場末の歓楽温泉街に遺る昭和遺産である・・足を踏み入れればどういうことになるのかぐらい想像がつく。
ちなみにネット上ではここに潜入を試みた偉大な先人たちの体験談を読むことができる。

その劇場の下には「ホテル永楽」なるどう見てもホテルには見えない構造物があった。
スナックが併設してるし、どっちかと言うと男女が利用するほうの類ではないのか。

今回初めて伊香保温泉を訪れ、その闇の部分をこの目でしかと拝むことができた。
もっと前に来ていたらきっと温泉だけ浸かって帰っていただろうと思う。

残念ながら色街としては末期的な様相を呈していたが、渋く味わい深い町並みはまだしぶとく生き続けていた。
どう見ても客足の落ち込んでいる伊香保の温泉街。急激に浄化されることはさすがに考えづらいが、逆に老朽化で取り壊される可能性は非常に高いと思う。

興味のある方は早目に訪問されることをオススメしたい。

[訪問日：2015年9月12日]