北木島からスタートし、真鍋島を経て笠岡港へ。
そこからクルマに乗り換え、瀬戸大橋を渡り、途中与島に寄りつつうどん県へ。
長い長い一日の終わりに選んだ宿が、香川県さぬき市の志度にある登録有形文化財のお宿、『以志や旅館』さんである。
今回の旅は、ほぼ宿ありきで行程を組んだ。
翌日は高松に用があったのに、高松を通り過ぎてさぬき市まで来てしまった。
つまるところ、それぐらい泊まりたかった旅館ということである。
それではお邪魔します
夕食付きにしていたのに、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。
到着が遅くなってしまったことを詫びつつ、勧められるがままに夕食の前に風呂に入った。
館内の散策は翌朝に回すことにして、まずは泊まった部屋をご覧いただこう。
広さは8畳あったろうか。
飾り気のない、質素な和室。
脇床にテレビが置かれ、あとはエアコンとポットがあるぐらい。
設備は最低限。風呂、トイレは共同。
静かな夜を過ごすにはこの上ないほど理想的な空間だと感じたのだが、万人に共感していただけるかはいささか自信がない。
余談だが、筆者はTVを見ない人間なのでなくてもまったく困らない。
床の間付近に目を向けると、建具の意匠がさりげなく凝っていることに気がつく。
何より、結霜ガラスがひときわ目を引いた。
全然質素なんかではなかった。前言撤回します。。w
夕食
館内には宿泊者用の食事処があり、通常はそこでいただく形となる、のだが・・
実は旅館の隣で「旬彩料理 以志や」という料理屋も営まれていて、訳あってそちらで出してもらった。(隣と言っても中でつながってるし、厨房は同じだと思われる)
海に面したまちだけあって、夕食は魚介類がメイン。
地の魚と地の酒が奏でるマリアージュは、秒で旅人に幸福感をもたらしてくれた。
さすがは料理屋と言った感じですべてのものが美味しかった。量もほどよく、大満足の余韻に浸りながら長い一日を終えた。
夜が明けて…
旅の渦中は、どんなにハードな行程で心身ともにくたびれていてもきっちり目が覚める。
まぁ、目的がほとんどブログのための取材みたいなもんだから起きないわけにはいかないというね。
そんなわけで翌朝。
こちらで朝食をいただいた。
朝食はシンプルな和定食。
量もちょうどよかった。
さて、じゃあ早速館内の散策へと行きましょうか。
内部は驚きの三層構造だった!
古い町家というのは得てして油断のならないものである。
通りから見える表の顔と、中に入らなければ分からない裏の顔があまりにも違いすぎることが往々にしてあるからである。
奴らは通行人をしたり顔でぬけぬけと欺いてくる。
残念ながら「以志や旅館」もその一派であった。
通りからは厨子二階、本瓦葺きの屋根、虫籠窓を設えた塗籠造。昔ながらの伝統的スタイルだった。
これは明治時代の建物だと言う。
創業が明治とのことなので辻褄は合う。
ここには玄関の他、朝食を取った部屋がある。
建物を抜けると中庭があって、これも想定の範囲内だった。
中庭を横目に眺めつつ、通路を進む。
振り返るとこう。ちなみに洗面所や風呂はこの通路に面してある。
中庭の先に建物があり、中へ入ってみると・・
なんと!!!
小部屋が通路になっていてまだ先があるではないか・・
抜けてビックリ・・奥にもう1棟あった。。
種明かしをすると、「以志や旅館」はそれぞれ中庭を挟んで合計3棟の建物で構成されている。
しかも、手前から明治、大正、昭和とすべて時代が異なっている。
客室は大正と昭和にあり、合計4室。
訊いたわけではないが、1階と2階でそれぞれ2部屋ずつだと思われる。
なお、筆者が泊まった部屋は“昭和の棟”の1階だった。
“大正”から“昭和”へ続く廊下
拡張で建て増しをしていった結果、建物が伸びたり2棟になったりはよく聞くが、3棟は初めてかもしれない。しかも、奥へ奥へと。
こんなに奥行きがあったなんて通りからでは絶対に知るすべがなかった。
到着。ここが一晩お世話になった昭和の棟。
“昭和”から“大正”を振り返る。
こちらが昭和の二階。一階とそこまで大きく変わる感じはなかった。
泊まった部屋の前から中庭と“大正”の棟を望む。
続いて“大正”。二間続きになっていて、結構な広さがあった。
複数人で泊まるとここに通されるのかな。
広縁からは中庭と“明治”の棟が一望できる。
この部屋がよかったな…w
縦構図で。
反対側の窓からは“昭和”の棟が見える。
うん、やっぱりこの部屋が一番よい気がするな。
お世話になりました
名残惜しくも出発の時間となり、旅館を切り盛りしているご夫婦と少し立ち話をした。
と言ってもホントに他愛のない雑談程度で、ここで特筆すべきような内容はない。
登録有形文化財のプレートは玄関内の壁にかけてあった。
ここにも書いてあるとおりだが、通りに面した“明治”の棟が登録を受けているそうだ。
北木島、真鍋島とあれほど天気がよかったのに、香川に来た途端雨模様。
前夜から降り始めた雨は、結局ほぼこの日一日降り続けた。
まち歩きの天敵だから雨は嫌いだ。
[2020年11月宿泊]
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